すべてはあの花のために⑥


「……べ、別にそれだけが理由じゃないよ? わたしは最初から訳があるんだろうって思ってたし、ヒナタくんのこと、ちゃんと信じてた……から?」


 ヒナタは、口を開いたまま固まっていた。


「あ、あれ? ひ、ひなたくーん? 帰ってき――うわあッ!!」


 彼の目の前で手を振っていたら、突然突き飛ばされて葵はぐるぐるぐる後転。


「いててて……。あ、れ? ヒナタくんがいない!」


 起き上がったら、ヒナタがいつの間にか消えていた。


「い、イリュージョン!? ひ、ひなたくーん! どこにいったの……!?」

「只今精神統一中なのでほっといてください」

「え」


 その声はくるくる丸まっているカーテンの中から聞こえた。


「ひ。ひなたくん……?」

「だから。今は話しかけないでって言って」

「ごめんね。ツバサくんには口止めされてたんだけど、でもおかげで信じられたから。バレンタインの時も、ちゃんと理由があったんだって。わかって。それで……」

「……わかったから。いまは、ほっといて……」

「し、知られたくなかったならごめんなさい。でもわたし、嬉しかったの。だから」

「だから! ちょっと放っておいてって言ってるでしょ……!?」

「ひっ、ヒナタくん……!?」


 カーテンから出てきたのは、真っ赤な顔をしたヒナタだった。


「最悪! もう! ほんとなんなの……!」

「え? ……え?」

「もうやだ。ほんとやだ。なんでバラすの。クソ兄貴っ」

「ひ、ひなたくん……?」

「あー。もうやだ。最悪。……なんだよこれ。かっこ悪……」

「……ううん。そんなことないよ?」


 膝の中に頭を埋めているヒナタの前に、「よいしょ」と葵も座る。


「……くっそ」

「ひなたくん」

「……なに」

「言いたいこと、あるんだ。わたしに時間、くれる?」