「……べ、別にそれだけが理由じゃないよ? わたしは最初から訳があるんだろうって思ってたし、ヒナタくんのこと、ちゃんと信じてた……から?」
ヒナタは、口を開いたまま固まっていた。
「あ、あれ? ひ、ひなたくーん? 帰ってき――うわあッ!!」
彼の目の前で手を振っていたら、突然突き飛ばされて葵はぐるぐるぐる後転。
「いててて……。あ、れ? ヒナタくんがいない!」
起き上がったら、ヒナタがいつの間にか消えていた。
「い、イリュージョン!? ひ、ひなたくーん! どこにいったの……!?」
「只今精神統一中なのでほっといてください」
「え」
その声はくるくる丸まっているカーテンの中から聞こえた。
「ひ。ひなたくん……?」
「だから。今は話しかけないでって言って」
「ごめんね。ツバサくんには口止めされてたんだけど、でもおかげで信じられたから。バレンタインの時も、ちゃんと理由があったんだって。わかって。それで……」
「……わかったから。いまは、ほっといて……」
「し、知られたくなかったならごめんなさい。でもわたし、嬉しかったの。だから」
「だから! ちょっと放っておいてって言ってるでしょ……!?」
「ひっ、ヒナタくん……!?」
カーテンから出てきたのは、真っ赤な顔をしたヒナタだった。
「最悪! もう! ほんとなんなの……!」
「え? ……え?」
「もうやだ。ほんとやだ。なんでバラすの。クソ兄貴っ」
「ひ、ひなたくん……?」
「あー。もうやだ。最悪。……なんだよこれ。かっこ悪……」
「……ううん。そんなことないよ?」
膝の中に頭を埋めているヒナタの前に、「よいしょ」と葵も座る。
「……くっそ」
「ひなたくん」
「……なに」
「言いたいこと、あるんだ。わたしに時間、くれる?」



