すべてはあの花のために⑥


 ハルナが産まれたのは2月28日。空は雲一つなくて、月が綺麗な夜だったみたい。オレが産まれたのは、29日の朝方。朝日が当たりを照らし始めた頃に産まれたらしい。
 ハルナを産んだ後一回陣痛治まったみたいで、オレらは双子だけど、産まれた日は違うんだ。

 大抵誕生日とかは考慮してくれたりするらしいんだけど、母さんが、月も太陽も綺麗だったから……って、よくわからない理由で双子だけど誕生日は別の日になった。
 別に、四年に一度でも気にしたことはないよ。ハルナの誕生日と一緒に祝ってもらえれば、オレはそれでよかったし。


 オレらはよく似てた。似すぎてた。だから家族以外に見分けられる人なんていなかったんだ。
 見分けて欲しいけど、でもそんなこと言えなくて。間違われる度に訂正してたけど、それも徐々にしなくなった。

 でもみんなは、ちゃんとオレらのことを見分けてくれた。呼ぶ時はちゃんと、ヒナタって。ハルナって。そう呼んでくれてた。
 だから、オレにとっては、みんな大切なんだよ。大事なんだ。かけがえのない友達なんだ。



 あんたの言った通り。ハルナが死んだのは、オレのことを庇ったから。
 遊びに出てたのを、迎えに来たんだよ。あの日。母さんとハルナ、二人が。

 ……でも、車が飛ばしてきて、オレに突っ込んできそうになってたのを、ハルナが突き飛ばしてくれた。
 ほんと、さっきのあんたみたいにね。その代わり、もうハルナは起きなかったけど。


 それからはツバサから聞いた?
 この事故のことが、なんかよくわかんないけど結構危ない感じらしくて、父さんはそのことを知って調べてた。母さんも、父さんの仕事部屋から資料を見つけて、支える気満々だったのに父さんに突き放された。
 誰だって、自分のせいで死んだんだとか言われたら、ショックでしょ。それがどんな意味を持ってたとしても。

 母さんは別居する時に、オレは絶対に離さなかった。ハルナと双子っていうのももちろんあったからだろうけど、母さんにオレがついててあげたかったんだ。
 父さんのことも、母さんのことも。知ってたから。オレは。

 まあそれだけじゃなくて、少しは責任感じてたのもあるけどね。父さんが、母さんのことをそうやって責めてたけど、オレのせいでハルナは死んだわけだし。

 ……ん? ああ大丈夫。今はもうそんなこと思ってないから。
 あんたのおかげ。全部丸く収まったのは。