「……温まる、か……」
葵は脱衣所で服を脱ぎ浴室へ。
「あ。お湯溜まってる……」
冷たくなった手で蛇口を捻る。
「……全然。わかんなかった……」
自分が冷たくなってたなんて。
「今までは、ちゃんとわかってた。その後倒れたりしたけど……」
倒れてた。その後は冷たくなった手を押さえてた。でも今は……。
「……わからなく、なっちゃったっ……」
自分の運命が刻一刻と迫ってきているのをひしひしと感じながら、沁みる傷口を押さえる。しばらくの間、浴槽から出る気にもなれなかった。
それでも気怠い体を動かし浴室から出ると、スウェット生地のパジャマとタオルが置いてあった。
「(……兄ちゃんは一声掛けてくれたぞ)」
まさかのガッチンしてたらどうするつもりだったのか。
リビングへと戻ると、ヒナタが散らばった部屋の片付けをしていた。
「あ。ちゃんと温まった?」
「うん! ばっちりだ! リンゴみたいに真っ赤っかだよ~」
「それじゃあ鍋の準備する?」
それから二人で台所に立って、並んで支度をした。
「あんた料理できたんだね」
「まあね! こんなんだけどね!」
「ふーん。それじゃああれして? これも。それから……」
「おう! 任せて!」
葵はヒナタに指示通りに支度を進めた。
「まあ鍋だし。切ってぶち込めばそれで良し」
「そ、そうだけどね……」
結局のところ、ヒナタは立ってただけで、葵が全部準備した。
「(……あれ? 一緒に準備するはずだったのに、扱き使われてただけじゃ)」
「お友達度UP頑張ってー」
「う、うん! 頑張る!」
あまりの扱いやすさに、葵の将来が心配になるヒナタであった。
「お鍋~お鍋~」
「鍋好きなの?」
「ううん! 久し振り!」
「……そうなの?」
「そうそう! ……昔はね、一緒に食べてたことあったんだけどね」
「……今は?」
「今、わたしは一緒に食事をさせてくれないから」
「……そうなんだ」
「ひなっ、……悪魔くんは?」
「……オレも、久し振りかな」
「そうなんだ? どうして?」
「オレも家で一緒にご飯、食べられなかったから」
「……そっか」
「うん」
……あれ? おかしいぞ? あんなにテンション高かったはずなのに落ち込んじゃった!!



