すべてはあの花のために⑥


 するとヒナタはゆっくりと起き上がり、指で数え始める。


「そ、そんなことしないでいいから……!」


 バシバシと背中を頭を叩くも、一向にやめる気配なし。


「提案を変更します」

「……? はい。なんですか?」

「あんたが着てるのを洗濯して乾燥させましょう。乾くまでは申し訳ないけど下着なしで我慢してください」

「え? それってどういう……?」

「サイズがありませんでした。ごめんなさーい」

「……?! 言い損じゃん! しかもわたしそこまで大きくないから! 何で両手で数えた?!」


 ぽかぽかとヒナタの背中を叩くも、当の本人はと言うと「ごめんごめん。母さん貧乳だったわ」と、全く以て悪びれる様子はなかった。


「……いいよ。今着てるのでっ」

「何。拗ねたの?」

「だって。ひ、……悪魔くんにバレたんだもん」

「悪かったって言ってるじゃん」


 それでも葵は唇を尖らせて拗ねている。


「……じゃあ、今日は鍋にしようか」

「え?」

「それだったら許してくれる? 鍋パ。二人だけど」

「……! ……うんっ。わたしも手伝う!」

「いいよ、ゆっくり入って。しっかり温まってきて」

「ううん。わたしもお手伝いしたい(お友達度UP目指して!)」

「何? お友達度って」

「はっ!」

「……それじゃあ、ぐちゃぐちゃの部屋の片付けしてるよ」

「そ、……それも一緒にやる」

「大丈夫だって。あれだけぐちゃぐちゃなんだから、どう考えたって全部片付けられないでしょ」

「でも……」


 ヒナタは、ぽんと葵の頭に手を乗せた。


「一人じゃ終わらないから、上がったらあんたも手伝って?」

「……うん」

「取り敢えず今は、ちゃんと温まること。いい?」

「うん……」


 俯く葵に、ヒナタはクスリと笑う。


「我が儘だね」

「ご、ごめんっ……」

「……オレも、あんたに話さないといけないか」

「え……?」

「ご飯食べて片付けして。……約束、するんでしょ?」

「……うん」

「行っておいで。ちゃんと待ってるから」

「……うんっ。わかった。ありがとうひな、……悪魔くん!」

「はいはい。あとで着替え持ってくるからね」


 そう言ってヒナタは脱衣所を後にした。