「そんな感じだ」
「た、大変だったねアキラくん……」
「父よ、脱ぎっぱはよくないぞ」と言う葵に「そうなんだ」と、アキラは肩を落とした。結構疲れたのは事実だから。
「……五つしか、教えてくれなかったんだ。葵」
「そうみたいだね」
葵は窓に頬をつけていた。まるで、何かを焦がれるように。
「さっき言ったこと、覚えてるか」
「……イエスかノー?」
「そうだ」
「……どうぞ?」
窓から視線が戻ってくる。葵の顔には、完璧な仮面が着いていた。
「っ、……それを、着けるのか」
「ん? 何のことかな?」
そう言う葵は、やっぱり微笑んでいた。
「……わかった」
アキラは質問できるだけいいと妥協したけれど、「でも」と葵が微笑みながら付け足す。
「答えるのはその五つに関してだけだよ」
「――!? そんなのっ」
「きっともうすぐお父様たちの話も終わるだろう。このまま他のことも聞こうとして、時間が潰れるのを待つか、五つのことだけに関してでも答えを聞くのがいいのか。……君は間抜けな選択はしないと思っているんだけど?」
自分を見下してくる葵からは、近寄らせない空気が漂っていた。
「(……舐められたもんだな、俺も)」
皇の次期当主として、そんな愚かな選択するわけないじゃないか。
「時間は有効に使おう。その五つのことに関してなら答えられるんだったな」
「その時間もあまりなさそうだから、こちらも五つだけ答えることにするよ」
どんどん幅が狭くなってるので、無駄に突っかかるのはやめることにした。
「質問もだが、その前に俺は、葵に話しておきたいことがあるんだ」
「…………」
イエスかノーでしか答える気はないのか、葵は何も言わない。
「俺にとっては、質問よりも大事なことだ」
アキラはそう言って立ち上がり、頭を下げた。
「え? ……あきら、くん……?」
「葵。この間は悪かった」



