葵の怒号に、流石のワカバも正気を取り戻したようにびくりと震え上がった。
「まずトウセイさん」
「は、はい……!?」
「あなた、正直にワカバさんが好きだからって言いなさい。あと、大事だったから巻き込みたくなかったからっていうのも忘れずに」
「え……?」
「あなたが言わなかったからこんなことになったんでしょうが。もう一遍ちゃんと言いなさい」
「……わかった」
トウセイの瞳に、決意が戻った。
「それからツバサ」
「えっ!?」
「あんたもあんたで~……! こういう状況だってお父さんに言ったらちょっとは早く変わってたかもしれないでしょう! 反省しなさい!」
「……はい」
「いや。今マジレス求めてないから」
「でも事実だ」
「……でも、変われたでしょ?」
「っ、あおい?」
葵はツバサの頭をぎゅっと抱き締めてあげる。
「……よく頑張った。お兄ちゃん」
「……! …………っ」
「もう一踏ん張りだよ。君がまとめるんだ。できる?」
「……ああ、もちろんだ」
先程までの動揺はすっかり消え、兄の顔に戻った。
それを見届けてから「さてと」と、葵は問題児へと向き直る。吹っ飛ばしてしまった彼のところまで歩み寄って、目の前にしゃがんだ。
「……痛かった?」
「…………」
「ごめんね?」
「…………」
「何とか言えやい」
「……まあ、あんたよりは痛くない」
そう返してくれるヒナタに一瞬目を丸くしたあと、小さく笑って頭を撫でた。
「君は、本当にお父さん似なんだね。隠して隠して、自分を犠牲にして。……ほんと、不器用さん」
「…………」
「でもね? 犠牲じゃどうやら人って幸せにはなれないらしいんだよ」
「……え」



