アキラがそう言うのが早いか遅いか、シランはさっさと立ち上がって服を着替え始めた。
「なんだよー。そんなに俺の着替えが見たいの?」
「そんな趣味はない」
でも脱ぎ始めている父を凝視してるので、端から見ればそう思われるのは仕方がないかもしれないが。
「さっき言っただろう。以上だよ」
「いや、詳しく話すって言っただろうが」
「あ。口悪ーい」
「おい親父。いい加減にしろよ」
「親父!? そんなことを教えた覚えは――……ああそうか、楓ね」
「いや、違う。今無性に腹が立ってるってことだ」
「え? なんで?」
「は? 逆にどうしてここで終われると思ってるんだ」
パーティーの時『説明をする』と言っていた。
こんなのが説明の内に入るかと、アキラはシランを睨み付けているが、父はそんなものもさらりと躱してしまう。
「だってお前、さっき言ったじゃないか」
「は? 何を?」
いつこんなに詰め寄ってきたのか、父は自分の目の前に来ていて、頬を突いてくる。
「ちゃんとあの時話せばよかったんだ。人を介しちゃいけないんだなって、そう思ったんだって」
「……だから?」
「『人を介しちゃいけない』って『ちゃんと思えた』んだろ? だったら直接本人に聞けばいい」
突いてきてはいるが、顔は至って真剣そのもので、こんな顔久し振りに見た。鋭い空気に、体が上手く動かせない。
そんなアキラに、シランは小さくやっぱり申し訳なさそうに笑って、その空気を断ち切る。
「すまんな秋蘭。これは『話せないこと』だ」
どこかで聞いた言い回しに、アキラは目を見開く。
「……父さんは、知っているのか……?」
でも、おかしい。確かにあの時、兄が言った中に父の名はなかったのに。
「まあ、少なくともお前よりは知ってたな」
「――!? ……どういう、ことだ」
アキラは父を睨み付けるも、父は呆れたように笑うだけ。
「ほら秋蘭。人を介さないんだろう? ちゃんと葵ちゃんに聞きなさい」
「いつから知ってるんだ……!」
子供のように、駄々をこねるようなアキラの頭をぽんと叩くだけ。
「知っていたことももちろんある。でも知ったこともある。それだけだ」
「……は? 結局のところ知ってるんじゃないのか?」
シランはただ、やさしい表情で笑うだけ。
「明日、葵ちゃんに聞けるといいな」
もう話す気はないようで、さっさと部屋から出て行った。
「いや、脱ぎっぱ……」
「はあー……」とため息をつき、その後アキラは、父の脱ぎ散らかした服を回収したのだった。
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