「んしょっと。ツバサくん、ちゃんと処置はしてるんだよね?」
「……一応は」
「みてもいい?」
「……ん。お願い」
生徒会室に到着するや否や、みんなは飲み物を準備した。葵たちの飲み物も準備してくれたよう。
「……痛い?」
「大丈夫よ」
「……がんばったね」
「……!」
葵は何も聞かず、ただツバサの頭を撫でてやる。
「……大丈夫? 押す?」
「……もう少し、頑張る」
みんなは、この状況になっているツバサに、なんとなく見当がついているみたいだった。
「(……やっぱりみんなも、何かしてあげたいけどできないんだ)」
キクも言っていた。
みんなが抱えている問題は【家】だ。友達だと言っても踏み込める限度があるし、アキラの時のように『見て見ぬ振りをしてくれ』なんて言われたら、なかなか近づくことはできない。
「(それだけお互いがお互いのこと、大切に思ってるんだよ)」
結束力は確かに強い。
でも、やっぱりどこか引いてしまうところがある。一歩、踏み出せないところがある。
「(それが当たり前だって、そう思ってしまってるんだ)」
みんなには、大事な人たちに踏み込んでいく勇気が欠落している。今思えば、それはそれぞれに踏み込んで欲しくないことがあったからだ。
それをいち早く葵は気がついたから、生徒会メンバーが決まり、歓迎会をし終わったあと理事長の願いを聞きに行ったんだ。
「(……その願いは【みんなの憂いを晴らすこと】)」
葵にとってみんなは、最初にできた友達で、もしかしたら最後になってしまうかもしれない友達だ。
「(そんなみんなのために。わたしは理事長の願いを叶えることにした)」
彼はちゃんと葵との約束を守ってくれていた。こんな葵のことを知ってでも桜に入れてくれた。
「(彼の願いを叶えること。それが今のわたしが生きる糧だ。とても大切なんだ。みんなのこと)」
葵は、入れてくれたコーヒーを飲みながら、そんなことを思っていた。
「(まあ今となっては、理事長がどうしてそんな願いを言ってきたのかわかってるけどね)」
キクにも言った。
願いは『雑草を抜くこと』と一緒。それが、葵にとってはこれ以上ないほどの気休めだと。
「(それに、いつの間にか味方もついていた……)」
こんな自分にも、たくさんの人がいてくれている。
「(……ほんと、この上ない気休めだっ)」
葵に付くことが、どれだけ危険なことなのか。きっとみんなは知らないだろう。
「(守るよ。大丈夫。……大切な人たちを、わたしが必ず守る)」
たくさんよくしてくれた。いろんなことを教えてくれた。
そんな大切な人たちをもう、……危険な目には遭わせない。



