すべてはあの花のために⑥


「んしょっと。ツバサくん、ちゃんと処置はしてるんだよね?」

「……一応は」

「みてもいい?」

「……ん。お願い」


 生徒会室に到着するや否や、みんなは飲み物を準備した。葵たちの飲み物も準備してくれたよう。


「……痛い?」

「大丈夫よ」

「……がんばったね」

「……!」


 葵は何も聞かず、ただツバサの頭を撫でてやる。


「……大丈夫? 押す?」

「……もう少し、頑張る」


 みんなは、この状況になっているツバサに、なんとなく見当がついているみたいだった。


「(……やっぱりみんなも、何かしてあげたいけどできないんだ)」


 キクも言っていた。

 みんなが抱えている問題は【家】だ。友達だと言っても踏み込める限度があるし、アキラの時のように『見て見ぬ振りをしてくれ』なんて言われたら、なかなか近づくことはできない。


「(それだけお互いがお互いのこと、大切に思ってるんだよ)」


 結束力は確かに強い。
 でも、やっぱりどこか引いてしまうところがある。一歩、踏み出せないところがある。


「(それが当たり前だって、そう思ってしまってるんだ)」


 みんなには、大事な人たちに踏み込んでいく勇気が欠落している。今思えば、それはそれぞれに踏み込んで欲しくないことがあったからだ。
 それをいち早く葵は気がついたから、生徒会メンバーが決まり、歓迎会をし終わったあと理事長の願いを聞きに行ったんだ。


「(……その願いは【みんなの憂いを晴らすこと】)」


 葵にとってみんなは、最初にできた友達で、もしかしたら最後になってしまうかもしれない友達だ。


「(そんなみんなのために。わたしは理事長の願いを叶えることにした)」


 彼はちゃんと葵との約束を守ってくれていた。こんな葵のことを知ってでも桜に入れてくれた。


「(彼の願いを叶えること。それが今のわたしが生きる糧だ。とても大切なんだ。みんなのこと)」


 葵は、入れてくれたコーヒーを飲みながら、そんなことを思っていた。


「(まあ今となっては、理事長がどうしてそんな願いを言ってきたのかわかってるけどね)」


 キクにも言った。
 願いは『雑草を抜くこと』と一緒。それが、葵にとってはこれ以上ないほどの気休めだと。


「(それに、いつの間にか味方もついていた……)」


 こんな自分にも、たくさんの人がいてくれている。


「(……ほんと、この上ない気休めだっ)」


 葵に付くことが、どれだけ危険なことなのか。きっとみんなは知らないだろう。


「(守るよ。大丈夫。……大切な人たちを、わたしが必ず守る)」


 たくさんよくしてくれた。いろんなことを教えてくれた。
 そんな大切な人たちをもう、……危険な目には遭わせない。