そこで「あれ?」とトーマは疑問を口にする。
「葵ちゃん。それまでにアキを振ったって言った?」
「……? いえ、言ってません。だってどうしてアキラくんと結婚するのか、とか、アキラくんが好きなのかとか聞かれただけで。アキラくんになんて返事したのかは聞かれませんでした。……あれ。聞かれたか。でもヒナタくんにぶちギレられたから、ちゃんと言えてないかも……」
トーマは頭を抱えた。
「葵ちゃん。取り敢えず、あいつらが怒ったのはそれが原因じゃない?」
「へ……?」
「アキに好きって言われたんでしょ?」
「え。何で知っ……いえ、もう聞きません」
葵も頭を抱えた。
「げ、原因って言うと……?」
「取り敢えず、葵ちゃんはみんなを振った。でも、『アキは振った』って言ってなかった。しかもそこでよくはわからないけど葵ちゃんが、『アキが好き』って言いだした」
「……はい。そうですね」
「そりゃ怒るわ。それが原因」
「え」
「あいつらヤキモチ妬いただけじゃん。……可哀想に葵ちゃん。男の嫉妬って怖いよね。醜いよねー」
流石にここで『あなたもでしょう』とは言わないでおいた。
「でも、ヒナタくんは嫉妬とかで怒ったんじゃないんです」
「葵ちゃん、それは」
「ヒナタくんには、みんなを怒らせてしまったことに関して、怒られてしまって」
「……そっか」
「そのあとわたしは自分が嫌われて当然だって言ったら、ツバサくんに叩かれました。……でも、怒ってくれてよかった。二人とも言ってくれたことは、間違いじゃない。本当に悪かったのはわたしに違いないんですから」
俯く葵の頭を、トーマはやさしく撫でてくれる。
「……左の青いリボンは五本だね。誰に許してもらったの?」
「キサちゃんもアキラくんも、謝って欲しいことなんてないって。だからそのままリボンごともらってくれました」
「そっか」
「カナデくんも、ツバサくんも、チカくんも、アカネくんも、オウリくんも。……みんな、わたしに、謝ってくれたんですっ」
「……うん。ちゃんとわかったんだ。みんな」
「でも、ヒナタくんはやっぱりわたしのこと、許せないみたいで。……話すことなんてないって。友達はみんなだけでいいって……」
「(あいつ……)」
「それで。嫌いって。消えてって。わたしなんかいらないって。……そう。いわ、れて……」
またぽろぽろと、涙がこぼれ落ちていく。
「……葵ちゃん。ちょっとだけ、あいつの話してあげるね」
首を傾けると、またいっぱいに溜まった涙がこぼれた。それに申し訳なさそうにトーマは笑みを浮かべる。



