すべてはあの花のために⑥


 そこで「あれ?」とトーマは疑問を口にする。


「葵ちゃん。それまでにアキを振ったって言った?」

「……? いえ、言ってません。だってどうしてアキラくんと結婚するのか、とか、アキラくんが好きなのかとか聞かれただけで。アキラくんになんて返事したのかは聞かれませんでした。……あれ。聞かれたか。でもヒナタくんにぶちギレられたから、ちゃんと言えてないかも……」


 トーマは頭を抱えた。


「葵ちゃん。取り敢えず、あいつらが怒ったのはそれが原因じゃない?」

「へ……?」

「アキに好きって言われたんでしょ?」

「え。何で知っ……いえ、もう聞きません」


 葵も頭を抱えた。


「げ、原因って言うと……?」

「取り敢えず、葵ちゃんはみんなを振った。でも、『アキは振った』って言ってなかった。しかもそこでよくはわからないけど葵ちゃんが、『アキが好き』って言いだした」

「……はい。そうですね」

「そりゃ怒るわ。それが原因」

「え」

「あいつらヤキモチ妬いただけじゃん。……可哀想に葵ちゃん。男の嫉妬って怖いよね。醜いよねー」


 流石にここで『あなたもでしょう』とは言わないでおいた。


「でも、ヒナタくんは嫉妬とかで怒ったんじゃないんです」

「葵ちゃん、それは」

「ヒナタくんには、みんなを怒らせてしまったことに関して、怒られてしまって」

「……そっか」

「そのあとわたしは自分が嫌われて当然だって言ったら、ツバサくんに叩かれました。……でも、怒ってくれてよかった。二人とも言ってくれたことは、間違いじゃない。本当に悪かったのはわたしに違いないんですから」


 俯く葵の頭を、トーマはやさしく撫でてくれる。


「……左の青いリボンは五本だね。誰に許してもらったの?」

「キサちゃんもアキラくんも、謝って欲しいことなんてないって。だからそのままリボンごともらってくれました」

「そっか」

「カナデくんも、ツバサくんも、チカくんも、アカネくんも、オウリくんも。……みんな、わたしに、謝ってくれたんですっ」

「……うん。ちゃんとわかったんだ。みんな」

「でも、ヒナタくんはやっぱりわたしのこと、許せないみたいで。……話すことなんてないって。友達はみんなだけでいいって……」

「(あいつ……)」

「それで。嫌いって。消えてって。わたしなんかいらないって。……そう。いわ、れて……」


 またぽろぽろと、涙がこぼれ落ちていく。



「……葵ちゃん。ちょっとだけ、あいつの話してあげるね」


 首を傾けると、またいっぱいに溜まった涙がこぼれた。それに申し訳なさそうにトーマは笑みを浮かべる。