すべてはあの花のために⑥


「……本当は、一番に言いたかったんだけど」

「え……?」


 嘘。だって、時期はまだ……。


「俺、センター試験を課した推薦入試だったんだよ」

「……いつ、わかったんですか……?」

「自己採点したら余裕だったから。本当は1月の半ばにはわかってた」

「……とーま、さん」


 二人してベッドから起き上がる。トーマは本当に嬉しそうに笑っていた。


「大学、受かったよ」

「~~……っ!! すごい!! おめでとうございます!!」


 嬉しすぎてトーマに抱きついてしまいそうだったけれど、それはやめておいた。


「そこは抱きつこうよ。手広げて待ってたのに」

「いや。いいです。よかったよかった」

「あれ。感動薄くない??」

「普通に嬉しいですよ? でもトーマさんが落ちるわけないと思ってたので、……よかった。本当に……」


 俯く葵の顔が嬉しそうだったので、トーマは小さく笑っていた。


「でも、どうしてわざわざこちらへ? そのリボンをしてるということは、午前中まではあちらへいらしたんですよね?」


 そう言う葵に、トーマはにっこりと笑う。


「俺が受かったの、桜の大学なんだ」

「え……!?」


 エスカレーター式で、小学校から高校までは進学できるが、確かに桜ヶ丘には大学もある。しかも超難関の私立大学だ。
 そこに受かったって。やっぱり只者じゃない。しかも推薦って。


「はあー……」

「……?」


 葵は頭を抱えた。彼が敵じゃなくて心底よかった。


「こっちで一人暮らしするから、今回は新居を探しに。授業もないし、あとは卒業式に出るぐらいだから、菊の部屋に取り敢えず住ませてもらうんだよ」

「だから学校まで来られたんですね」

「……菊のお迎えに来たんだけど、葵ちゃんいるかなーと思って連絡したらまさかのどんぴしゃ! あ。チョコ美味しかったよ。ありがとう」


 にこにこ笑いながら体を揺らしているトーマに、何故かいつも以上に危機感を感じた。


「新居が決まったら、一旦あちらへ戻られるんです?」

「ううん。帰るのはもう卒業式の時だけ。あとはもうこっちにいるよ? ……いつでも会えるよ、葵ちゃん」


 トーマは葵の頬に手を伸ばそうとする。


「きちんと、ナツメさんとアヤメさんと話したんですか?」

「うん。……もうだいぶ前から言ってるよ。葵ちゃんに助けてもらったあと別れてから俺はすぐ、こっちに来ようって思ってたんだから」

「……そう、ですか」


 なら、もう11月に行った時にはすでに二人ともきちんと納得をして、……トーマの邪魔をしていたのか。(※愛情表現)


「学部とかって……」

「法学部」


 言葉にならなかった。
 え。ぴったりだよ? うん。あなたにはこれ以上ない学部だと思うよ? 


「弁護士、目指そうと思って」


 ……うん。あなた絶対に勝つよ。負け無し弁護士で有名になるね。絶対。
 葵は、本当にぴったりすぎる彼の職業に涙が出た。


「泣くほど喜んでくれるんだ……」


 いえ。あなたと戦う人が可哀想だと思っただけです。弁護はされたいとは思うけど。絶対に勝てるだろうしね。