しばらくして落ち着いた葵に、トーマがあったかくて甘いホットミルクを作ってくれた。
「……ありがとう、ございます」
「いいえ。……落ち着いた?」
一口、甘いミルクを飲むと、すごく気分が安らいだ。
「おいしいです」
「そ? それはよかった」
嬉しそうにトーマがにっこり笑ってくれる。それにつられて笑おうとしたけれど、「無理に笑わなくていいよ。引き攣ってて怖いから」と言われたので、すぐにやめた。
ホットミルクをちびちびと飲む。
「葵ちゃん。あいつらと喧嘩したんだって?」
「え? 何で知って……」
「俺の情報網舐めないでよ。それぐらいのことすぐにわかるんだから」
リボン、未だに解いてないのにストーカーに遭っています▼
「それで? 喧嘩したのが原因? でもそれってちょっと前だよね?」
すでに被害に遭っています▼
「喧嘩の原因まではわからないんだけど、なんで喧嘩したの? 珍しいこともあるもんだと思ったんだけど」
「わたしがアキラくんと結婚するからです」
束の間、トーマの時が止まった▼
「葵ちゃん! 今すぐ俺と結婚しよう!」
「申し訳ありません……」
「そんな普通に答えないでよ呆けたのに」
「(いや、絶対本気だったでしょ……)」
トーマは葵の手をコップごと捕まえてきて、真面目な顔してそんなこと言ってきた。
最初は、初めてのパターンだったのでどうしようかと思ったけど、冷静に対処できた。100点満点だ。
「ていうかそれってほんとなの? 冗談とかじゃなくて」
「そうですね。この縁談は殆ど決まったようなものなんです」
「……へえ」
「……怒って、いらっしゃいますか?」
「別に葵ちゃんに怒ってるわけじゃないよ? なんでそんなこと急に決まったのかなって思ってる」
「……この、縁談はずっと前から決まっていたことです」
「縁談があったから、俺を振ったの? 時間がないって、大人になる前に消えるって、そういうこと?」
「……近からず遠からず、ですね」



