その時、生徒会室の仮眠室の扉が大きな音を立てて開かれた。
「っ。え……? とーまさ」
「っ、葵ちゃん!」
何故今、ここに彼がいるのかわからないまま、勢いよく抱き締められる。
「と。とーま。さん……?」
「うん。そうだよ。……会いたかったっ」
肩で息をしていた彼は、葵をぎゅっと抱き締めてくれる。
「と、まさん。どうして……」
「話はあとでちゃんと話すよ。その前に……っ、どうしたの葵ちゃん。目が真っ赤だよ」
「……!」
一瞬体を強張らせたものの、赤くなっていたのが白目だとわかりすぐに力が抜ける。
「ちょっと待ってて。ハンカチ濡らしてくるから」
ぽんぽんと、頭を撫でて出て行く彼の背中を、葵はぼうっと見つめた。
「と、まさ。……自分でやります」
「ううん。俺がやってあげたいからさせて」
トーマはすぐに帰ってきてくれて、葵の隣に座って目元を濡れたハンカチで押さえてくれる。やさしい声に、葵は少し甘えることにした。
そのやさしさにまた、涙が込み上げてくる。泣かないって決めたのに止まらない。
トーマは小さくため息をついて、背中をゆっくりと撫でてくれた。
「……と、ま。さんっ……」
「ん? 何?」
「とーま。さんっ」
「……うん。ちゃんといるよ」
手を伸ばし、見えない彼を捜すと、それまで背中を撫でてくれていた手がぎゅっとその手を握ってくれる。
「今は泣いていいよ? 誰もいないから。……誰も、聞いてないからね」
「……っ。――――」
目元を押さえている手が離れていく。でも、次の瞬間には、トーマに力強く抱き締められていた。
でも、やっぱり彼女は、どうして泣いているのかは言わなかった。ただ自分の服にしがみつき、時々自分の名前を切なく呼ぶだけ。
「(……葵ちゃん。何があったっていうんだ)」
そんな葵を、トーマは涙が落ち着くまで抱き締めていた。



