すべてはあの花のために⑤


「わあ。ほんとに外国に来たみたいだね!」


 その世界中のブランドものが並んでいる通りは、どこか異国の世界を感じさせるような空間だった。


「アンタって、外国行ったことってないの?」

「ツバサくんはあるの?」

「行ったことはあるわよ。そう言うってことは、アンタはないのね」

「そうなんだよ~。わたしは行けないからね~」


 キサは、チカゼとヒナタ、それからカナデとアキラ、オウリとアカネを引き連れて、ここぞとばかりにたくさんのものを見たり買ったり、目と心の保養をしているようだ。


 やっぱり可愛いので、店の人や観光客に絡まれたりしてたけど、そこにボディーガードとしてみんなが付いているようだ。しかし、荷物持ちとして引き連れている理由の方が、どちらかというと大きそうだけど。


「……どうして行けないの? 家の人からダメだって言われてるの?」

「ううん? 別に何にも言われてないし、何にも言われないよ? 修行に行く時もそうだったし」

「だったら、今度一緒に行きましょ」

「えっ?」

「……何よ。行きたくないの? すごい楽しそうじゃない今」

「うん。外国気分味わえて、すっごく嬉しい」


「だったら」とツバサは言うけれど、葵は首を振る。


「家は何も言わない。わたしも行ってはみたい。でも今は行きたくないの」

「……なんか、矛盾してるわね」

「うん。でも、いつかは行きたいと思うよ」

「そう……」

「だから、行けるようになったら一緒に行こう?」

「ええ。そうね。どこに行こうかしら」


 町並みも楽しみながら、二人もお店を回った。


「ツバサくんはどこに行ったことがあるの?」

「ハワイとかグアムとか? 毎年行ってたのよ。家族で」

「そうなんだ! みんな仲が良いんだね!」

「……ええそうね。よかったわ」

「……ツバサくん?」


 ツバサはある店で立ち止まる。
 その店のショーケースには、男の子と女の子が背を合わせて立つ、陶器で出来た時計が飾ってあった。


「アタシは、どうやったって女にはなれないの」

「つ、ツバサくんっ?」


 表情がいつになく苦しそうで、ツバサは拳を強く握り締めている。


「こんな恰好をしても、結局は男なのよ」


 その店から視線を引き剥がすように歩き出したツバサは、苛立ちや悔しさ、いろんな感情とともに突き進んでいく。


「立派なモノは付いてるし」

「そ、そうだね?」

「可愛いものを、好きになろうと努力したわ」

「その努力があって、今のツバサくんがあるんだね」

「でもそれは、一種の収集癖みたいなものなの」


 ツバサは、可愛い雑貨の店の前で立ち止まる。


「……可愛いものを。女の子らしいものを持っていたら、安心するの」

「ツバサくん……」


『……まだ、話せなくて悪い』

 あの時苦しそうに言っていた彼が、少しずつ零している。それは、少しずつ前へ進んでいる……いきたいと思っている証拠だ。