「わあ。ほんとに外国に来たみたいだね!」
その世界中のブランドものが並んでいる通りは、どこか異国の世界を感じさせるような空間だった。
「アンタって、外国行ったことってないの?」
「ツバサくんはあるの?」
「行ったことはあるわよ。そう言うってことは、アンタはないのね」
「そうなんだよ~。わたしは行けないからね~」
キサは、チカゼとヒナタ、それからカナデとアキラ、オウリとアカネを引き連れて、ここぞとばかりにたくさんのものを見たり買ったり、目と心の保養をしているようだ。
やっぱり可愛いので、店の人や観光客に絡まれたりしてたけど、そこにボディーガードとしてみんなが付いているようだ。しかし、荷物持ちとして引き連れている理由の方が、どちらかというと大きそうだけど。
「……どうして行けないの? 家の人からダメだって言われてるの?」
「ううん? 別に何にも言われてないし、何にも言われないよ? 修行に行く時もそうだったし」
「だったら、今度一緒に行きましょ」
「えっ?」
「……何よ。行きたくないの? すごい楽しそうじゃない今」
「うん。外国気分味わえて、すっごく嬉しい」
「だったら」とツバサは言うけれど、葵は首を振る。
「家は何も言わない。わたしも行ってはみたい。でも今は行きたくないの」
「……なんか、矛盾してるわね」
「うん。でも、いつかは行きたいと思うよ」
「そう……」
「だから、行けるようになったら一緒に行こう?」
「ええ。そうね。どこに行こうかしら」
町並みも楽しみながら、二人もお店を回った。
「ツバサくんはどこに行ったことがあるの?」
「ハワイとかグアムとか? 毎年行ってたのよ。家族で」
「そうなんだ! みんな仲が良いんだね!」
「……ええそうね。よかったわ」
「……ツバサくん?」
ツバサはある店で立ち止まる。
その店のショーケースには、男の子と女の子が背を合わせて立つ、陶器で出来た時計が飾ってあった。
「アタシは、どうやったって女にはなれないの」
「つ、ツバサくんっ?」
表情がいつになく苦しそうで、ツバサは拳を強く握り締めている。
「こんな恰好をしても、結局は男なのよ」
その店から視線を引き剥がすように歩き出したツバサは、苛立ちや悔しさ、いろんな感情とともに突き進んでいく。
「立派なモノは付いてるし」
「そ、そうだね?」
「可愛いものを、好きになろうと努力したわ」
「その努力があって、今のツバサくんがあるんだね」
「でもそれは、一種の収集癖みたいなものなの」
ツバサは、可愛い雑貨の店の前で立ち止まる。
「……可愛いものを。女の子らしいものを持っていたら、安心するの」
「ツバサくん……」
『……まだ、話せなくて悪い』
あの時苦しそうに言っていた彼が、少しずつ零している。それは、少しずつ前へ進んでいる……いきたいと思っている証拠だ。



