すべてはあの花のために⑤


「作文は、自分の意見や気持ちを書くでしょう? 作文は文章だけで書いていくものなんだけど、レポートは事実だけを写真やグラフを用いて、全く知らない人にもわかりやすく説明してあげるように書くんだよ」

「ていうことは、自分の意見っていらないの?」

「最後に、自分が今回のことを学んで『わたしはこう考えます』っていうのはあったらいいかも」

「作文だと、自分の意見がいっぱいあって、知らない人が見てもわからないことが多いってことだね!」

「それを見るだけで、自分が書いた題材を相手にまるっと伝えられたら大丈夫だよ」

「あー。……頑張ろ、オレ」


 チカゼは、面倒くさそうにガシガシと頭を掻いている。


「……でも、戦争のことを今知ってる人って少なくなってるから、こういうのをレポートにしてたくさんの人に知ってもらうことって、大事だと思うんだ」

「だからあーちゃんは、ここを題材にしたの?」


 葵は、にっこりと笑った。


「……それだけじゃ、ないんだけどね」


 と、本当に小さな声で答えながら。