すべてはあの花のために⑤


「あーちゃん?」

「え? なーにオウリくん」


 隣を歩いていたオウリが、不安げに声を掛けてくる。


「……あーちゃん今、顔が怖かったから……」

「ま、またなまはげになってたのか。気をつけないと。ありがとうオウリくん」

「ち、違うよ! あーちゃん美人さんだから、折角の綺麗な顔がもったいないなって!」

「まあっ! ありがとーよしよしよし~」


 葵はお礼にオウリの頭をぐしゃぐしゃにしてあげた。


「お礼じゃないっ!」

「可愛いオウリくんが悪いっ!」

「あーちゃんの方が可愛い!」

「オウリくんの方が可愛い!」


 言い合いをしていたら「二人ともうるさい!」とみんなに怒られてしまった。


「へへ。怒られちゃったね?」

「そうだね。なのにどうしてオウリくんは嬉しそうなの? とうとうMに目覚めたちゃった?」

「ちっがーう! あーちゃんとなら、なんだって嬉しいってこと!」

「えっと。……流石に怒られてるから、喜ぶのはちょっとやめた方がいいと思うよ?」

「え。そっか。うん。わかった。気をつける」


 なんて素直でいい子なんだ! と、また頭をわしゃわしゃしようと思ったら、オウリにはまだ何か聞きたいことがあるようで。


「あーちゃん、さっきからメモ取ってないけど、大丈夫?」

「気にしてくれてありがとう。大体こんな感じってレポートには書くから、ピンポイントだけ覚えてるの」

「そっか。……あーちゃんはレポートって書くの得意? おれどうしても作文みたいになっちゃうんだあ」

「あ。それ、あたしもそうなる。先生に、『これは作文です。レポートじゃありません』って、よく言われるー」

「お、オレも教えてくれ!」


 そして気づけば、何故かお悩み相談に。


「(ま、それで話題が逸れるなら、わたしとしても有り難いけど)」


 取り敢えず今は、三人の悩みを解決することに専念しましょうか。