「あーちゃん?」
「え? なーにオウリくん」
隣を歩いていたオウリが、不安げに声を掛けてくる。
「……あーちゃん今、顔が怖かったから……」
「ま、またなまはげになってたのか。気をつけないと。ありがとうオウリくん」
「ち、違うよ! あーちゃん美人さんだから、折角の綺麗な顔がもったいないなって!」
「まあっ! ありがとーよしよしよし~」
葵はお礼にオウリの頭をぐしゃぐしゃにしてあげた。
「お礼じゃないっ!」
「可愛いオウリくんが悪いっ!」
「あーちゃんの方が可愛い!」
「オウリくんの方が可愛い!」
言い合いをしていたら「二人ともうるさい!」とみんなに怒られてしまった。
「へへ。怒られちゃったね?」
「そうだね。なのにどうしてオウリくんは嬉しそうなの? とうとうMに目覚めたちゃった?」
「ちっがーう! あーちゃんとなら、なんだって嬉しいってこと!」
「えっと。……流石に怒られてるから、喜ぶのはちょっとやめた方がいいと思うよ?」
「え。そっか。うん。わかった。気をつける」
なんて素直でいい子なんだ! と、また頭をわしゃわしゃしようと思ったら、オウリにはまだ何か聞きたいことがあるようで。
「あーちゃん、さっきからメモ取ってないけど、大丈夫?」
「気にしてくれてありがとう。大体こんな感じってレポートには書くから、ピンポイントだけ覚えてるの」
「そっか。……あーちゃんはレポートって書くの得意? おれどうしても作文みたいになっちゃうんだあ」
「あ。それ、あたしもそうなる。先生に、『これは作文です。レポートじゃありません』って、よく言われるー」
「お、オレも教えてくれ!」
そして気づけば、何故かお悩み相談に。
「(ま、それで話題が逸れるなら、わたしとしても有り難いけど)」
取り敢えず今は、三人の悩みを解決することに専念しましょうか。



