すべてはあの花のために⑤


 カチリと、キサの感情が悲しみから怒りへと切り替わる音がした。


「圭撫の家でも話聞いたけど、その時『よくもやってくれたなあっ!』って思ったわけよ!」

「ど。どうしたんだキサちゃん」

「だって恋愛初心者もピヨピヨ初心者に! 『好きなんだ。そばにいたいんだ』とか言われても! 赤ん坊に『結婚しよう』って言ってるようなもんでしょう! ビックリしてそりゃ大泣きするわ!」

「ぴ、ぴよぴよ?」

「しかも何っ! 秋蘭も言ってるとか! そりゃあっちゃん怖くもなるわ!」

「え? う、うん……?」


「よちよち。かわいそうに。大変だったねー」と、頭を撫でられた。
 でも、どうやら彼女も思ってるところがあるらしい。どうせならと、あなたのそんな気持ちもこのハートに吸い取ってもらいましょう。


「だから、あたしのあっちゃん恋愛講義を、柚子にもちょっと手伝ってもらえてよかったなって」

「キサちゃんがユズちゃんに、そうお願いしたの?」

「違う違う。あの子が勝手にノリノリで入ってきただけ」

「そ、そう。女の子ってすごいね……」

「そう。女の子ってね、すごいんだ。怖いくらいに恋愛一つで人が変わったようになっちゃうんだ。それは女の子に限った話じゃないけど」

「それは……うん。何となくわかる」

「お! あっちゃんも成長したね!」

「あれだけグイグイ来られたら嫌でもわかるよー」

「い、嫌なんだ」

「ほどほどにはしてもらいたいよねー」


 どうやらみんなの攻め方を考え直さないといけないと、キサは思った。