カチリと、キサの感情が悲しみから怒りへと切り替わる音がした。
「圭撫の家でも話聞いたけど、その時『よくもやってくれたなあっ!』って思ったわけよ!」
「ど。どうしたんだキサちゃん」
「だって恋愛初心者もピヨピヨ初心者に! 『好きなんだ。そばにいたいんだ』とか言われても! 赤ん坊に『結婚しよう』って言ってるようなもんでしょう! ビックリしてそりゃ大泣きするわ!」
「ぴ、ぴよぴよ?」
「しかも何っ! 秋蘭も言ってるとか! そりゃあっちゃん怖くもなるわ!」
「え? う、うん……?」
「よちよち。かわいそうに。大変だったねー」と、頭を撫でられた。
でも、どうやら彼女も思ってるところがあるらしい。どうせならと、あなたのそんな気持ちもこのハートに吸い取ってもらいましょう。
「だから、あたしのあっちゃん恋愛講義を、柚子にもちょっと手伝ってもらえてよかったなって」
「キサちゃんがユズちゃんに、そうお願いしたの?」
「違う違う。あの子が勝手にノリノリで入ってきただけ」
「そ、そう。女の子ってすごいね……」
「そう。女の子ってね、すごいんだ。怖いくらいに恋愛一つで人が変わったようになっちゃうんだ。それは女の子に限った話じゃないけど」
「それは……うん。何となくわかる」
「お! あっちゃんも成長したね!」
「あれだけグイグイ来られたら嫌でもわかるよー」
「い、嫌なんだ」
「ほどほどにはしてもらいたいよねー」
どうやらみんなの攻め方を考え直さないといけないと、キサは思った。



