葵はゆっくりキサに今までのことを話し出した。
カナデに告白されたその次の日の朝に、アキラにも気持ちを伝えてもらったことを。
「でも、秋蘭だけ保留って……?」
「返事はもう決まってるの。ただ伝え方を変えたから」
「伝え方? を、変えたの?」
「うん。ここまでしか言えなくてごめんね」
「え? ううん? あっちゃんが困ったことになってないならいいんだよ。……大丈夫、なんだよね?」
「うん。それはもう大丈夫。ちゃんとアキラくんにも伝えるよ」
「そっかそっか。それはよかった」
ほんとに安心してくれたようにキサが笑ってくれた。
だから続けて、カナデやシント、トーマにも直接言えたことを伝えた。それからチカゼには、彼を捜しに行った時に告白されたこと。オウリには、声が出るようになってすぐ、気持ちを伝えてもらえたこと。
葵は、ぎゅっと自分の手を握る。
「キサちゃん。わたしね? みんな断ったの。それなのに、こんなにわたしのこと、好きでいてくれてる」
「……うん」
「今までは、そんな強い気持ちが怖かったの。こんな苦しいもの、知らない方がいいって。そう、臆病になってた。でも今は、わたしにもそんな風に思える人ができたらいいなって、そう思うの」
「……あっちゃん」
「今は、恋に落ちるのが楽しみだよ? だからキサちゃん。わたしのこと、心配してくれてありがとう」
「――! あはは。ばれちゃってたか」
キサは、素直に胸の内を打ち明けてくれた。
葵が困ってるんじゃないかと思って、こうして二人で話ができるように誘ってくれたこと。
ハートも、何かの役に立てればいいと思っていたこと。人に話すことができずに、抱え込んでしまわないように。話すだけで、スッキリしてもらえるように。
「わたしは、もう恋愛には臆病じゃないから。キサちゃんの心配事も少しは減ったかな?」
「……あたし。文化祭で。あっちゃんが。人を好きになってもいいんだ、て……」
「うん」
「なんでそんなこと、思っちゃったのかとか、思ったけどっ。でも、あっちゃんには絶対幸せになって欲しくて。少しずつ、あっちゃんに恋愛を、教えてあげていきたかったんだけど……」
「うん」
「……圭撫の野郎がぶっ飛ばしやがったから」
「え」



