「にしてもあっちゃん、秋蘭にも告白されてキスもされて、終いには日向にも告られるなんて……」
「え? ヒナタくんにはそんなこと言われてないよ?」
「え? だって、一緒に手繋いでたじゃん」
「わたしもビックリしたよー。何がしたかったんだろうねー?」
「(……あいつにしてはめっちゃ頑張ってるのに……)」
何ともまあ、不器用な弟2号のアピール結果を知って哀れにキサは思っていたけれど。
「(……いや、そうでもないか。何となくだけどあっちゃん、居心地悪そう)」
葵はその話が出てからというもの、自分の左手と服の上に置いてあるブレスレットを、ぼうっと見つめていた。
「(何を思ってるのかまではわからないけど、あっちゃんにとってプラスのことだといいな)」
そんなことを思っていたキサとは反対に、葵はというと。
「(左手に着けるのは変わりたいから。右手は目標が決まってるって言った。わたしも頑張らないとっ!)」
残念ながら、キサが考えてることじゃなかったけれど。
「あっちゃんあっちゃん! 女子トークしようぜ! 今日は寝かせないんだから~!」
「えー。わたし眠いから、日付変わる前には帰るよ?」
「ええ?! 寂しい!」
「男子の方行ったら楽しいかもよ?」
「あ。それはそれで楽しそう……」
「ね? それまではわたしとお話しよ?」
「うんうん!」と嬉しそうに頷いたキサは、「あのね、あっちゃん」と続ける。
「秋蘭にいつ告白されたの?」
「す、ストレートだね」
「聞きたい~」
「こういうのってあんまり言いたくないんだけど……相手も、言って欲しくないかもでしょう?」
「いや、先に言ったの秋蘭だし」
「それもそうか」
「それにみんな宣戦布告してるから、あっちゃんも自分ばっかり溜め込んでないでいろいろ話しちゃいなよー」
「……別に、溜めてるつもりはないんだけど」
「でもあっちゃん、振って悪いことしてるって思ってるでしょ?」
「それは……」
「だから気にしなくていいんだってー! そんなことしてたら、あっという間にそんなあっちゃんにつけ込んで変な奴来ちゃうかも知れないし、あいつらもぺろっとあっちゃん食べちゃうかも知れないでしょう?」
「それは嫌だわ」
「だから、ちょっとでも聞かせて? 秘密を誰かと共有してるだけでも、窮屈だった心に余裕って出てくるものだからさ」
キサに心と言われて、思わず反応してしまった。
「(そこまで窮屈とか思ってないけど。でも、余裕は確かに欲しいかも)」



