すべてはあの花のために⑤


 にこにこと笑っていると、いつの間にかみんな集まってくる。そして「仲がいいね」と、みんなは口を揃えた。確かに葵も、いつも以上に仲良くしてくれるヒナタに少し不思議に思うことはあったけれど。


「ま、オレらお揃いだしね」


 そう言うや否や、ヒナタは葵の左手を、右手で掴んで掲げる。


「ほら。カップルみたいでいいでしょー」

「えっ?」


 ヒナタがみんなに見せたのは、さっき作ったブレスレット。案の定みんなからは、どういうことだと問い詰められる。キサだけは、やっぱり楽しそうに笑っていたけれど。


「あーめんどくさ。ほら、行くよ」

「ちょっ。ヒナタくんッ?!」


 けれどヒナタは、手を繋いだまま走って灯台から離れていく。後ろでギャーギャー叫びながら、みんなが追いかけてきていた。


「ひ、ひなたくんっ? 一体どうし――」


 どうしたのかと、それ以上は聞けなかった。

 少しだけ振り返って見えた彼の瞳が、どうしてか愛おしげに、葵を見つめていたように見えたから。