「……トランプの、ピラミッド……」
葵がヒナタに壊されてしまって、写真に収めることができなかったと思っていたもの。
「こ、これ……」
「あれ。いらなかった?」
一体いつ撮ったのだろうかと、写真とヒナタを交互に見ながら疑問符をそこら中に飛ばす。
「オレにできないことはないからね」
「どこかで聞いたなあその台詞……」
そこまで似なくてもいいだろうにと思っていると、彼は歩いて坂を下り、灯台から離れていく。葵は、その彼の後ろをゆっくりと付いていった。
「もしかしなくとも、それってトーマ?」
「あはは。よくわかったね」
すると彼は、足を止めた。その横顔は、少しだけ嬉しそうだ。
「え。魔王様だよ? え? だから君は悪魔くんなの?」
「いや違うし。ていうか何わけわかんないこと言ってんの」
「い、いひゃい」
ヒナタが、軽く葵の頬を抓った。
「昔から尊敬してるんだよ。チカみたく、本人に言ったことはないけど」
「え。悪魔感を?」
「言い方が悪い。頭がよく回るところとか、よく気付くところとか。でもオレが一番尊敬してるのは、トーマの腕だから」
小さい頃、トーマが撮った写真を見せてもらったことがあるそうだ。それが好きだったから、真似するようになったのだという。
「……だから、似てたんだね」
「え?」
「あ。えっと、ヒナタくんの写真、トーマさんの写真とよく似てたから」
「……今はオレの方が上な自信あるけど?」
「ははっ。そうかもね」
似てるのは、写真だけじゃないけどね。
でもそれは、そっと飲み込んだ。知らないことばかりだったけれど、彼のことを知れて嬉しい自分がいたから。



