「(あ、そうだ。さっきの着けよーっと)」
出来立てほやほやのとんぼ玉を取り出した葵は、早速ブレスレットを着けようとするけど、どうしても片手だと上手くいかない。
苦戦していると、「貸して」とため息交じりにヒナタの手が伸びてきて、さっと着けてくれた。
「あ、ありがとう」
「いいえ。ていうかミサンガ着けてたんだね」
「え? あ、うん! 折角だしっ」
「……あんた利き手どっちだっけ」
「右だよ?」
「目標が決まってるなら利き手。何かを変えたいなら、利き手とは逆にしたらいいって聞いたことあるよ。まあこれ、パワーストーンの話だけど」
「……何かを、変えたい?」
「何? なんか変えたいことでもあるの?」
「……わたし、は……」
ブレスレットを押さえながら思わず俯く。するとヒナタが心配そうに覗き込んだ。
「もしそうじゃないなら、折角だし今のうちに変えたら? 着ける手」
「……ううん。大丈夫。わたしにはこっちで正解だから」
「あっそ」
「ヒナタくんはどっちに着ける? 多分今は着けないんだろうけど――」
と言い終わる前に、ヒナタも自分の手首に葵とお揃いのものを着け始める。
「オレはこっち」
ヒナタが着けたのは、右。
「つっ、着けてくれるのっ?」
「え。だって、折角だし」
「そっか! お揃いだね!」
「アーハイハイ。ソーデスネー」
「もうっ! なんで素っ気ないの!」
「あんたの困ってる顔が好きだから」
「ああそうですかそうですか! もう知らない!」
「…………」
「あれ? というかヒナタくん、利き手どっちだっけ?」
「右だけど」
「そっか! だったら目標が決まってるんだね! すごいねえ!」
「はあ。……それで? あんたは何を変えたいの」
そう尋ねたヒナタは、なんでか頭を抱えていたけれど。
「……わたしが変えたいのは、『わたし』だ」
そう答えながら葵は、真っ直ぐ手を空へ――太陽へと伸ばす。
「お日様を、取り戻したいなって」
「……お日様? 取り戻すってどういうこと?」
「こんな話を聞いてもつまんないよ」
「つまんないかどうかを決めるのはあんたじゃない」
真摯な瞳に真っ直ぐ見つめられる。
「……ある日、小さな小さな芽は、ぽとんと海の中に潜っていきました」
それがどうしてか嬉しく思えて、葵はぽつりぽつりと話し出した。



