そう言って葵の頭を引き寄せようとするアキラに、必死に腕を突っ張っていると、パコパコパコーンッ! と軽快な音が。どうやらいつもの常備品スリッパが、アキラの頭に命中したらしい。
「アキ! 流石に変態化しすぎ!」
「圭撫に言われるのだけはショックだ」
「公衆の面前でアンタは何やってるの!」
「翼。もう一回してるから大丈夫だ」
「はあ?! どういうことだよ!」
「チカ、聞いてくれる? 今俺、葵のくちび――」
「あきクン! それは言わなくていいこと!」
「む。だって言いたかったんだもん」
「あっくんどうしたの?! 今までにないくらいの大暴走だよ!?」
「桜李も聞いてくれ。とうとう俺もできたんだ」
「ほくほく顔のところ水を差すようで悪いけど、了承なしってそもそもカウントに入るの?」
「違うんだ日向。選択肢になかっただけだ」
「選択肢? どういうこと?」
「紀紗、それは言えないんだ。でも俺は、とうとう葵に思いも告げられた上に、キスまでできて嬉しくってはしゃいでるってことだ」
「あっ、アキラくん! こういうのはいちいち報告しないものなの!」
「ご、ごめん。つい嬉しくて……」
「はあ。先が思いやられる」と、頭を抱えながら立ち上がる。でも、拘束を解いてくれたアキラが、立ち上がりながら「まあ、返事は保留のままだけど」と言ってしまったので、再びみんなが叫び始めた。
「アキラくん! 余計なこと言わなくていいの!」
「だって負けたくないもん」
「いや確かに、わたしも負けず嫌いだから、気持ちはわからんでもないけどさ」
「それに、みんなには牽制しておかないと。葵を狙う輩が多くて困るし」
「(どうしよう。アキラくんへの返事は、ただちょっとその伝え方に悪戦苦闘してるだけなのに)」
今ので絶対、みんな変に取ったよねと、葵は大きなため息を落とすしかできなかった。



