答えが体に、脈に現れる。
それでも彼は、それを口にはしなかった。
「……もしそうだったら左頬に。そうじゃなかったら右頬に。わからなかったらおでこに」
「……葵?」
「言いたくなかったら鼻に。アキラくんがそれで治るなら、……キスしてもいいことにする」
「……!」
柱の陰になっているので、みんなからは見えない。
ゆっくりと二人は離れて、お互いが苦笑い。アキラは、葵の耳から後頭部にかけて手を添えて、柔らかくキスを落とした。
「……んっ」
その場所は――……唇。
「……あっ。アキラくんっ?!」
しかし彼は、悪びれる様子もなくしゃがんだまま葵を引き寄せる。
「答えは、『それどころじゃなかった』だな」
「え……?」
「葵に言われるまで、そんなこと考えてなかった」
「……!」
「でもそう言うってことは、どこか心当たりがあるんだな」
「そ、れは……」
「もしそうだったとしても、俺はきっと、鼻にしてたよ」
「……言いたく、ないの?」
「またお前が、どこか行ってしまうのが嫌だから」
「アキラくん……」
「またお前に、……自分を気持ち悪いだなんてこと、言って欲しくないんだ」
力強く、引き寄せられる。
「だから俺は言わない。お前の心を守りたいから」
「……わかった」
「もう何も気にするな。オウリの家でのことも」
「うん。……ありがと。アキラくん」
彼の手は、もう震えていなかった。
……けれど。
「あ、あの。アキラくん?」
「なんだ」
彼の手が、さっきよりもがっちりと後頭部に回っているのは、きっと気のせいではないだろう。
「み、みんなのところに行こっか?」
「まだ、荒療治できてない」
「嘘言うな! もう全然震えてないじゃないかっ!」
「震えてはないけど、俺は葵を見るだけでいろいろ感じるんだ」
「どっ、どういうこと?」
「だって俺は、葵が好きだから」
「そ、そういうのはっ。普通おおっぴらに言わないのっ!」
「しょうがない。俺は昨日葵に襲われる前から、葵にはいろいろ反応してる」
「ほ、ほんとどういうことーッ?!」
「いいから。今は黙って――」



