そう言うツバサに肩を掴まれて、彼の前まで連れてこられた。
「……えっと。アキラく」
「――……!」
柱の陰に話しかけたら、向こうでびくっと彼が肩を大きく震わせたのが見えた。
「(……わたし、一体どこまで襲ったの。こんなアキラくん初めてなんですけど……)」
「あっ。こ、これは。違うんだ……」
と言っていても、体が震えているように見えるのは気のせいではない。
「でも、怖いでしょう? わたしのこと」
「ち、違う! 怖い、とか。そんなんじゃなくて……」
「え。ど、どうしたんだアキラくん」
アキラの前まで来たけれど、彼はなんでか頭を抱えてしゃがみ込んでいた。慌てて葵も、彼と一緒にしゃがみ込む。
「……ど、どうしても。思い出して……」
「うん。だから、嫌だったんでしょ」
「ちが……っ! ……っ、体が。勝手に、反応するんだ。お、思い、出して」
「え」
「葵は、覚えてないんだろうけど。……勝手に、なんか。変に……」
「(重傷じゃん……)」
怖がられていないだけ、良しとするべきか。
「ど、どうしたら治るかな……?」
「……昨日は、葵にされたから。今日は俺がす――」
「それはさせないよ?!」
「む」
結構余裕じゃないかと思ったけれど、彼の手はやっぱり震えたままで。
「……しょうがない! 荒療治といこうか!」
「はっ? ちょ、待てっ。葵……!」
「またないっ」
「――!」
葵はアキラの両頬に手を添えて、額同士をこつんと合わせる。
「……あ。おい……?」
「大丈夫。……大丈夫だよ、アキラくん」
小さな声は、きっと目の前のアキラにしか聞こえない。
「ごめんねアキラくん」
「葵……」
ゆっくりと、両頬に当てていた手を、アキラの首まで下ろしていく。
「……っ」
ぴくりと動いてしまうアキラは、反射的に葵から離れようとしたけれど、葵は絶対に離さなかった。
「アキラくんにだけ、聞きたいことがあるんだ」
「……? な、何?」
葵は小さく息を吸う。
「……昨日のわたしは、“オウリくんの家で見たわたし”と一緒だったかな」
「――!」



