「きっと、お前は覚えてないんじゃないかって思った。案の定、お前は知らない間に変になって、それを全く覚えてなかった。だから、お前のせいじゃないよ」
「……で、でも……」
「みんながあんな態度を取ったのは、お前とどう接すればいいかわかんないだけ。お前だってそうだろ? お前も、聞く前まではちゃんと普通でいられたのに、みんなにどんな顔して会えば、何て言えばいいかわかんなくなっただろ?」
「それは……」
「だから言うのやめてたんだよ。お前にそんな態度取って欲しくなかったから」
「チカくん……」
「お前がもうオレらから離れちまうのが嫌だったから、オレらはもし、お前が覚えてなかったら言わないでおこうって決めてたんだよ。なのにキサがさっさとチクるし、お前は飛び出して行っちまうし。もう散々」
「で、でも! 知らないままも嫌だった!」
慌てて言うと、チカゼはわかっていると言いたげに小さく笑った。
「お前なら絶対、そう言うって思ってた」
彼の笑顔が眩しくて、今度は慌てて顔を逸らす。
「安心しろ。みんなあんな顔してっけど、もう気にしてねえよ」
「う、嘘だっ!」
「今朝は、多分お前の顔見て思い出しちまったんだろうなー。特にアキが」
「……! ううぅ~……」
「あっ、悪い悪い! 違えから! 昨日の時点で、このことはオレらの胸の中にしまっとこうって話になったんだよ。もう一切触れないって。だから大丈夫だ。あいつら別に、お前のこと嫌ってねえから」
「……チカくんはそう言ってくれるけど、わたしにはそう思える自信がないよ……」
「……じゃあ、もしオレが暴走してお前に酷いことしたら、お前はオレのこと嫌いになんの? もう話してもくれねえ? 会ってもくれねえ?」
「そ、そんなこと絶対にしないよっ!」
「それと一緒」
「あっ……」
「オレらも一緒。じゃねえと捜しになんか来ねえよ。……お前も、オレのこと捜しに来てくれたじゃん。だからさっさと腹括れ」
「……はーい……」
「何だよ、そのやる気のなさは」
「チカくんに教わることになるなんて……」
「……お前、今日の夜覚えとけよ」
「じゃあ今度はチカくんの部屋の前にとりもちを仕掛けておこう」
「え。あれもうないんじゃないの?」
「たくさんあるから、チカくんの部屋中に仕掛けてあげてもいいよ?」
「やめとくわ。お前には勝てねえ」
「うむ。良い心がけだ」



