すべてはあの花のために⑤


 葵は、繋がっている手をくんと引っ張ってチカゼと向き合う。


「……いろいろ、言いたいことあるんだけど」

「はいすみませんごめんなさいどうかしてました。やっぱり死んでお詫びを――」

「その下りはもうやめろ」

「わ、わかった」


 チカゼは、「うーん」と悩んだあと、「ま、いっか」と。指を絡ませるようにして繋ぎ直す。


「それは歩きながらってことで」


 嬉しそうに笑いながら、そう言って楽しげに歩き出した。



「まずだ。結論から言うと、どうやら原因はオレにあるらしい」

「はい?」


 至って真剣な顔で何を言うかと思えば。


「オレがお前に、『飲んだことないのにすれば』とか言ったからさ」

「え。でもそれって別に普通じゃ……」

「もっと言ったら、オレがお前に負けなかったことが原因だって言われた」

「(丸め込まれてる。絶対ヒナタくんだ……)」

「だから、お前は気にすんな」

「いやいや! 絶対わたしの方が悪いじゃん!」

「は? どこがだよ」

「だ、だってみんなに酷いことしたし……」

「それを、お前が故意にしたってんなら、オレらは怒ってたかもしんねえけど、明かお前普段と違ってたから。なんか、酔った感じ? みたいになったんじゃないかって話になって」

「お、お酒じゃないのに」

「変な体質の奴なんか、世の中にはごまんといるもんだ。おまけにお前は変態だし、しょうがない」

「そうか。それはしょうがない」


「そこは納得すんなよ」と、チカゼは眉尻を下げて笑っていた。