「……え。う、嘘でしょ……?」
話を聞いた葵の顔は真っ青になった。それだけでなく、手がカタカタと震えて止まらない。
「う、嘘だよね? わ、わたしっ。そ、そんなことするわけ……」
「あーちゃん。残念ながらほんとなんだ」
「――!」
「ううぅ~……」
言い切る前にオウリがアキラのとこへ行って、首元をかぱっと開いて見せてきた。開けられたアキラは何の抵抗もなく、ただ静かに両手で顔を隠して唸っていた。
アキラの首元と鎖骨には、くっきりはっきり紅い花が咲いていたのだ。
「……そ、それをわたしがしたと……?」
シンクロ率100%。
みんなは複雑そうな顔で頷いていた。
葵は、信じられなかった。まさか、こんなことになるなんて。
何が悪いんだ。ウコンか? 乳酸菌飲料か? 炭酸か?
そもそもあれか。じじ抜きで負けたことがそもそもの原因か?
もう、わけがわからなくなった葵は、ザッと立ち上がった。
「し、死んでお詫びをおぉおぉぉ~」
葵が走っているバスの窓を開けて飛び降りようとしたので、みんなは必死で葵を引っ張った。おかげで運転手に気付かれる前に、あっという間に後ろへひっくり返ったけれど。
「(どうしようどうしようどうしようっ。……っ、どうすればいいか、ほんとにわからないっ!)」
葵は小さくなって、椅子の上で体育座りをしていた。
「(ほんと、何やってるのわたしっ! アキラくん襲うわ、カナデくんも襲いかけるわ。暴露しまくるし、ツバサくんの急所蹴っちゃうとか……あ、あとが怖いぃい)」
ついでに、みんなの視界から逃れるように頭も抱えた。
「(チカくんに使えないとか! アカネくんもキサちゃんもぶっちゃけちゃってるしっ! ヒナタくんにあんなこと言うとか、どんだけ怖い物しらずっ!? オウリくんにも、……っ。酷いこと、言っちゃってるし)」
みんなもどうすればいいのかわからないようで、お互いが様子を窺っていると、あっという間に首里城に着いてしまった。
「(……っ、絶対に見学なんてできないからあー……ッ!)」
葵はダッシュでバスを降りて、ダッシュで首里城の中に逃げ込んだのだった。



