すべてはあの花のために⑤


 葵の飛び込んだ勢いのまま、アキラは尻餅をついて床に座り込む。それでも葵は、アキラの首に抱きついて離れない。


「もうっ。ほんと、間近で見るとますますいい男! ねえねえ、甘い物好きなんだってね~。お汁粉買ってこなくってごめんねー? その代わりに、わたし。食べちゃっていいよ?」

「……は? 何、言って」

「甘くて美味しいもの。好きでしょう? だからきっと、わたしも美味しいと思うから」

「ちょっ。待て。あおっ」

「ま た な い」

「んんっ!?」


 葵は、アキラの唇に噛みつくようなキスを落とす。彼の歯列をなぞり舌を絡め取り、深く深く繋がろうとする。


「……ん、はっ。……ちょ、ほんとに……」

「なに? 気持ちいい?」

「……っ!」


 アキラの体の力は抜かれ、身動きが全くとれなくなっていた。そんな状態のアキラの、漏れ出る吐息でさえ奪うほど、もっともっとと、葵は絡めるように口づける。


「はあ。はあ……」

「ふふ。感じやすいんだ?」


 息が切れているアキラの耳に、首筋に、鎖骨にキスを落とし、舐め回していく。


「……っ。……ほんと。やめ……」


 舌が這う感覚に、どうしても体が反応する。
 その様子を満足そうに葵は笑ったあと、アキラの帯を取り払う。


「――! ま、待て葵!」

「待たないって言ったでしょう? わたしが、気持ちいいこと教えてあげるから」


 そして葵は、アキラにもう一度顔を寄せ、口づけをしようとした。


 ――――――……
 ――――……