すべてはあの花のために⑤


「お星様が、子どもを産むところを探してたの。そうしたら天の神様が、あの島がいいだろうって言って、今星の砂で有名な島の海で生むように勧めてくれたの。お星様は、その海でたくさんの子どもを産んだけど、今度は海の神様が勝手に子どもをここで産んだことを怒ったの。だから海の神様は、星の子どもたちを殺したんだよ」


 悲惨な話に、ツバサは絶句していた。


「子どもたちの死骸は星の形になって、その島の浜に打ち上げられた」

「それが、星砂になったってことなのね」

「でもこの話もね? わたしは好きなんだ」

「……最後が、幸せだから?」


 じっと見つめてくるツバサに、一瞬だけ視線を合わせて小さく笑う。


「その浜の女神様が可哀想に思って、天国に返してくれるの。星砂を集めて、香炉に入れてあげた。煙とともに天に昇っていく星砂たちは、産んでくれたお母さんの星のまわりで、綺麗に輝いてるんだって」

「なんであーちゃんは、こんな話ばっかりよく知ってるの」


 いつの間に起きていたのか。


「……言ったでしょう? わたしが好きだからだよ」


 オウリにはただ、そう答えた。


「だって幸せになれるんだから。星の砂って幸せを呼ぶんでしょう? わたしは、たとえつらいことがあったとしても、幸せが訪れると。そう思ってるよ」


 その時、上演が終わった。
 さっさと葵が立ち上がったから、二人はそれ以上を聞けなかった。