「あ。……そういえば、あっちゃんに昨日渡そうと思って渡し忘れてたものがあって」
「え? なになに?」
キサが鞄をがさごそ。
見えてしまったごちゃごちゃさは、見えなかったことにした。
「実は、あっちゃんにすぐ着けてもらいたかったから、袋も値札ももちろん外しちゃってるんだけど……」
するとキサが、葵の首に腕を回して何かを着けてくれる。
「よしっ。これでおっけー!」
キサが葵に付けてくれたのは、鍵穴の付いた【ゴールドハートのペンダント】だった。
「これにはね、おまじないがあるんだよ~」
「おまじない?」
「このペンダントトップ、どうして一緒に鍵が付いてないと思う?」
「言われてみればそうだね。どうしてだろう」
キサは、着けられたことに満足そうに笑いながら、つんと葵の首元で揺れるハートを触る。
「これには、ちゃんと相手がいるからだよ」
「え?」
「……このペンダントにはさ、ジンクスがあるんだ」
そう言ってキサは、ゆっくりと話し出した。
「恋愛運はもちろんなんだけど、負の感情を吸い取ってくれる力があるの」
肌身離さずこのペンダントを着けてくれたなら、『鍵穴』からあなたの暗い気持ちを吸い取りましょう。
あなたの暗い気持ちを吸い取ることができた時、あなただけの『鍵』が現れるでしょう。
その『鍵』で、あなたのハートを開けてもらいましょう。
きっとあなたを、このペンダントが幸せへと導くでしょう。



