すべてはあの花のために⑤


「あ。……そういえば、あっちゃんに昨日渡そうと思って渡し忘れてたものがあって」

「え? なになに?」


 キサが鞄をがさごそ。
 見えてしまったごちゃごちゃさは、見えなかったことにした。


「実は、あっちゃんにすぐ着けてもらいたかったから、袋も値札ももちろん外しちゃってるんだけど……」


 するとキサが、葵の首に腕を回して何かを着けてくれる。


「よしっ。これでおっけー!」


 キサが葵に付けてくれたのは、鍵穴の付いた【ゴールドハートのペンダント】だった。


「これにはね、おまじないがあるんだよ~」

「おまじない?」

「このペンダントトップ、どうして一緒に鍵が付いてないと思う?」

「言われてみればそうだね。どうしてだろう」


 キサは、着けられたことに満足そうに笑いながら、つんと葵の首元で揺れるハートを触る。


「これには、ちゃんと相手がいるからだよ」

「え?」

「……このペンダントにはさ、ジンクスがあるんだ」


 そう言ってキサは、ゆっくりと話し出した。


「恋愛運はもちろんなんだけど、負の感情を吸い取ってくれる力があるの」



 肌身離さずこのペンダントを着けてくれたなら、『鍵穴』からあなたの暗い気持ちを吸い取りましょう。

 あなたの暗い気持ちを吸い取ることができた時、あなただけの『鍵』が現れるでしょう。

 その『鍵』で、あなたのハートを開けてもらいましょう。

 きっとあなたを、このペンダントが幸せへと導くでしょう。