すべてはあの花のために⑤


 その時、どこからか、声が聞こえました。


『このままでいいの?』

「このまま?」


 こどもは聞き返します。



『お空のお星さまになることよ』

「とってもきれいだね」


 こどもは答えます。



『あなたはとても可哀想な子ね』

「どうして?」


 こどもは尋ねます。



『あなたは愛を知らないの。とっても温かいものよ』

「……あい?」

『そう。だからわたしが、あなたを助けてあげるわ』

「……ほんと?」

『ふふ。…ええ。その代わり、わたしに【お日さま】をくれるかしら』

「……おひさま?」

『あなたはとっても可愛いお花。お日さまに向かって綺麗に咲くお花。あなたが大きくなるまでに『あなた』を呼んでもらえたら、あなたに【お日さま】を返してあげるわ』

「……? よく、わからない……」

『……じゃあ、ここで生き延びて愛を知るのと、知らないままお星さまになって真っ暗な世界に行くの。あなたはどっちがいいかしら?』


 こどもは悩んだ末、前者の方を答えます。


『ありがとう。もし呼んでもらえなかったらその時は、……わたしがあなたの【 】をもらうわね』

「……わかんにゃいよぅ……」



 こどもはその言葉を最後に、意識がぷつりと切れました。