アカネがそう言うと、葵は驚いたように目を見開いた。名前を呼ぶと、すぐ「あ。……ううん。なんでもない」と彼女は緩く頭を振る。
「わたしは、ここまで巻き込んでしまった君を、もうこれ以上近づけさせないようにするかもしれない。でもそれは、何よりも君が。みんなが。大切だからだ。大切なもののためなら、わたしだって嫌われてもいい覚悟はあるんだ」
真剣な眼差しが、真っ直ぐにアカネを捕らえた。
「それでもいい?」
「……うん。望むところだよ。おれだって、諦めるつもりなんて最初からないんだから」
二人は笑い合う。
でもお互いの瞳は強く、灯火が点った。
「それじゃあ勝負だっ、アカネくん!」
「そうだね! あおいチャン!」
二人は拳をぶつけ合った。
二人の表情は、とても綺麗な笑顔だ。
「でも、ちょっとはアカネくんとお話しできるみたいで、安心してるところもあるんだ。今まではシントと理事長。それから、少しだけならキク先生とトーマさんだけだったからさ」
「(きくチャン先生もだったのか)」
「だから、アカネくんもわたしのこと見ててね? おかしいとこがあったら教えてね?」
「え。どういうこと?」
でも、それ以上彼女は何も言わなかった。
「(……うん。ちゃんと見てる。もう君に、おれは踏み込んだんだからっ)」
そのあと床を綺麗にしながら、いつシントと理事長と話したのかとか、そんな話して別々の部屋へと帰る。
「あおいチャンっ」
「ん? なーに?」
連絡通路の端と端で。
「その運命を断ち切ったら、おれのこと、もう一回ちゃんと考えてね!」
「――!」
「それじゃあおやすみ!」
「お、おやすみ……!」
いつものアカネに戻ったけれど、ちょっと攻め気味な彼には気をつけないといけなくなってしまった葵であった。



