すべてはあの花のために⑤


「たとえ、そうだとしてもそうでないにしても。おれはあおいチャンのことが好きだから。あおいチャンが大事だから。あおいチャンのこと、たくさん知りたいから。……あおいチャンと話ができれば、おれはそれでいいんだ」

「あかねくん……」

「でも今日はここまでにする。……おれのこと、警戒しないでくれると嬉しいんだけど」

「……お友達のこと、警戒なんてできないよ」

「そっか。……そう言ってもらえるだけで安心した。今の話するの、結構賭けだったんだ。この話をしたら、おれはもうあおいチャンに会うことも、話すこともできなくなるのかもしれないって」


 思った以上に安堵している自分に、苦笑が漏れる。


「それでも、おれはあおいチャンのこと信じてた。きっとあおいチャンは、おれらから離れはしないだろうって」

「……うん。大事なお友だちと、たくさん思い出作るので、今のわたしは大忙しだから」

「ははっ。そっか。……でも、もしおれとは話したくなくなったら、おれのことはもう無視していいよ。無理して欲しくないし」

「そ、そんなことするわけが」

「でもみんなとは話して? みんなとは一緒にいて? みんなとは、たくさんの思い出作って?」

「あかね、くん……」

「それぐらい。おれはたとえ、あおいチャンに嫌われたって。話してもらえなくなったって。会えなくなったって。あおいチャンのこと大好きだし、なんとしてでもあおいチャンの運命を断ち切る覚悟だってある」

「……っ。うんっ」

「だから、本当に何でもいいんだ。こんなことばっかり話したいわけじゃないし。あおいチャンと話せるだけで。会えるだけで。おれは幸せだから――」

「あかねくんっ」


 言い切る前に、葵に抱き付かれた。


「あっ、あおいチャン?」

「ありがとう!」

「――!」

「ありがとう。アカネくん。そこまでして、わたしのために頑張ってくれて」

「……うん」

「でもわたしは、みんなをわたしの運命に巻き込みたくはないの」

「こんなにあおいチャンのことが好きなおれは、もう十分君に巻き込まれてると思うけど」