顔をこちらに少しだけ向けて、腕の隙間で彼と視線が合う。
「(……なんか。投げ飛ばされた時のアカネくんみたい)」
「……これは、言えないことなのか」
「アカネくん?」
「……これは、おれには話せない?」
アカネは頭を起こし、ただ真っ直ぐに葵の瞳を見つめる。
「……ずっとじゃ、ない」
「じゃあなんで、誰とも付き合えないの?」
「そ、れは……」
「……もしかして、『願い』と関係がある?」
「――! な、なんでアカネくんがそのことを知ってるんだっ!」
「え? あ、あおいチャン?」
掴みかかると、アカネは「お、おれは聞いただけだから。『願い』がなんなのかも全然知らないよ?」と、すぐに白旗を揚げた。
「……ほんとう?」
「うん。ほんとだよ」
ほっとした葵は、「あ。ご、ごめんね」と、慌てて掴んでいた手を下ろす。
「……それで? 願いなの?」
「…………」
「言えない?」
「……願いは、関係、ない……っ」
下唇を噛みながら、何とかそう絞り出す。
「……ということは『付き合えない』のは、あっちと関係が……」
「あ。アカネくん……?」
「……まあ、ここは『願い』と関係してないってことが知れただけでもよしとしよう」
「えっと……?」
何かを呟いていたアカネは、すぐに切り替えて葵をじっと見つめてくる。
「……あおいチャン。体育祭の時、一体誰と話をしてたの」
そしてアカネは、葵に踏み込んだ。



