「おっせーよ! てかなんで自分の部屋いねえんだよ!」
「あーちゃーん。たすけてよー……」
「二人とも! 取り敢えずスリッパを脱いだら助かるぞ!」
二人はハッ! とした表情になって、すぐに脱いだ。
「……チッ」
「あーちゃーん。またくっついたあー……」
「(この子たち。たまにおバカちゃんだよね、わたしより)」
決して、ウサギさんとネコさんを捕まえるために仕掛けたわけではないのだ、断じて。
「と、取り敢えず、二人はもう一回お風呂入ってね」
「いいから早く外せ」
「全然取れないよおー……」
葵は、取り敢えず二人に小麦粉を振りかけた。
「はあっ?! ごほっ!」
「ごほっ。ごほっ。あ、あーちゃん?」
「うん。これで二次災害には遭わないはず」
「いやそこまで大事じゃないから」
「え。何これ。コント?」
振りかけ終わったら、ヒナタとキサが鼻と口を浴衣の袖で押さえてやってきた。
「絶対従業員さんビックリするんだけど」
「どうして助けようとしているあっちゃんまで小麦粉まみれなの……」
「え? だってわたしにもくっついちゃうかもしれないじゃん!」
そう言うや否や、葵は食用油を使って、ゆっくりとオウリの足を剥がしてあげた。
「わたしの肩に掴まってくれていいからね。転んじゃったらもっと悲惨だよ」
「う、うん……」
そうしてオウリは、葵に足を丁寧に剥がしてもらいつつ、しっかり葵の肩というよりはもう頭にしがみついていた。
その様子にももちろん、きっとそんなオウリに「大丈夫だよ。すぐに助けてあげるからね」と、見つめ合って言っている葵に、苛ついている人が若干名。そんな弟たちを見て、「あらあら」とお姉さんは微笑んでいたけれど。
そしてやっと、とりもちが剥がれた。
あ、いや。とりもちからオウリが剥がされた。
「あーちゃんありがとー!」
「いいから! 早くお風呂に行って、しっかり小麦粉と油ととりもち落としてきなさい! 時間かかるからっ!」
「あっ。あーちゃんが怒ったあ~……!」
オウリは泣きながら、キサと葵の間の部屋へ入っていった。
そしてキサと葵は、お互い目を合わせる。やっぱりかと。



