すべてはあの花のために⑤


「道明寺様。本日はお忙しい中、足を運んでくださりありがとうございます」

「皇くん。お招きありがとう。あまり長居できないのだが……明日、またこちらに来た時にでも話をしよう」

「そうですね。話をしましょう」

「(皇くん(、、)に道明寺()。……同年代か父さんの方が少し上だろうに。やっぱり道明寺は、皇よりも……『上』?)」

「秋蘭、ご挨拶を」

「はい。申し訳ありません道明寺様。皇家次期当主、次男の秋蘭と申します。どうぞ、お見知り置きください」


 胸に手を当てたアキラは、軽く会釈をする。


「そうか、君が。あれ以来会っていなかったが、大きくなったものだ」

「ありがとうございます(会った覚えなんかないが)」


 そうしていると、「ほら、お前も挨拶しなさい」と、彼は隣に立つ彼女を促す。


「はいお父様。本日は、わたしもお招きいただきありがとうございます。シラン様、皇くん」


 彼女の顔には、がっちりと仮面が着けられていた。


「にしても、いつ振りだったかな」

「十年振りですわ、お父様」


 こうして葵と父アザミが出てくるのは、アキラの誕生パーティー以来。道明寺は今まで、表舞台への沈黙を貫いてきていた。


「お忙しいのですね」

「それももうすぐ安泰だろう」


 そうしていると、視線を感じたのか。アザミは二人の後ろに立っているみんなへ視線を向ける。先程まで朗らかな空気を纏っていた男は、取り繕うこともなく瞬時に苛立ちへと顔を歪めた。


「どうしてこのような場所に、どこぞの子供が紛れ込んでいる」

「ああ。あちらにいるのは秋蘭の友人なのです。それ相当の地位や権力、実力を持つ子たちですよ」


 シランが庇うが、みんなの視線はどこか鋭さを持ったままだ。


「礼儀も知らん奴はとっとと撮み出したいところだが……今夜は皇の主催。見なかったことにしよう」

「寛大なお心に感謝を。そして、不快な思いをさせてしまい申し訳ありません。彼らにもよく言っておきましょう」

「いや、いいんだよ。……代わって流石は皇の息子。堂々とした立ち振る舞いに、顔立ちもいい。頭は特に切れそうだ」


 アザミはアキラを値踏みするように見つめる。


「(……何だ。この、嫌な感じは……)」


 朗らかな空気など、もうどこにもない。微笑むアザミから感じるのは、冷酷さと不快さだけだ。