そして、二人の乗った車が見えなくなった頃。一つ深呼吸をしてアイが口を開く。
「そんなに心配でしたか?」
少し、声を張って。
「てっきり何かしてくるんじゃないかと思って、ヒヤヒヤしましたよ」
「……そんなことしても、アオイちゃん喜ばないからねー」
ひとり。カナデが出てアイの前へ出る。
「そっか。よっぽど皆さんあおいさんのこと、お好きなんですね」
「だったらなんだよ」
次はチカゼが。鋭い視線を向けた。
「いえいえ。あおいさんはおモテになって大変だなーと思っただけです」
「そうですねえ。あおいチャンはとてもいい子ですからあ~」
「あーちゃんはよく気がついて、まわりをよく見てて、それでもって格好いいんですよー」
アカネとオウリもそれに続く。にっこり笑顔で。瞳には鋭さを携えたまま。
「俺もそう思います! だから、諦めずに頑張ろうと思いますよ!」
「ポジティブさは感心するけど、時には引くことも大切よ」
ツバサの牽制に、アイは一瞬驚いたように目を丸くするも、ふっと表情を和らげた。
「そうですね。押して駄目なら引いてみろ、でしょうか」
「……ねえ。あなたは誰?」
キサは、少しだけ不安そうに尋ねた。
「名前ですか? ……そうですね。では、アイと呼んでいただければ」
「……アイ?」
ヒナタは名前を復唱した。眉を顰めながら。
その後に誰も続いてこなくて、アイは思わず首を傾げる。
「あれ? もう一人の方はいつの間にいなくなったんですか?」
アキラの存在まで気付いていたのかと、自分たちのことを把握しているアイに、みんなは怪訝な表情を浮かべた。
「え。な、なんでそんな目で見るんですか。知ってるのは、あおいさんが言ってたからですよ?」
『わたしの大切なお友達が一緒に来てるみたいで。もし邪魔をしてしまったらごめんなさい』
「そう、行きの電車の中で仰っていたので」
みんなは絶句した。初めから葵にはお見通しだったのだ。
「小瓶に入れた石の数は八つ。……もしかしたら、そのお友達に見立てたのかなと」
何も知らない彼は、どうやら頭が切れるようだ。
「俺、頑張りますね!」
それが名前のせいなのか。まさかそんなわけがと考えていると、戸惑いを隠せないみんなにアイはにっこり笑顔を浮かべる。
「俺。……負けないですから」
小さく宣戦布告したアイは、みんなに背を向け、改札の方へと大きく一歩を踏み出す。
「……俺が必ず、盗んでみせますから」
自分の小瓶を見つめながら、アイは誓う。そこに入っていた、クリスマスカラーの赤と緑のストーン、そして黒色の鍵に――――。



