「……俺がお礼をこれにした理由も、ちゃんとわかっていたんですね」
「いいえ? 全然知りませんでした」
「だ、だったらなんで返事を……」
「えっと。何分、こういう経験をしたことがないもので……」
ポリポリと、葵は頬を掻いた。
「わたしの大切な人たちが、お礼の意味を教えてくれたんです」
みんなは思いました。やっぱり気付いてなかったんかいと。
「だったらちゃんと、あなたにお返事をしなければと、そう思ったんです」
「……そうだったんですね。察してくださって、そしてご丁寧に伝えてくださって、ありがとうございます」
どこか彼はスッキリした表情をしていた。
「ということは、友達に昇格したってことですよね!」
「え? ええ、間違ってはいないですけど……」
「だったらまた頑張ります! なのであおいさん。今度よかったら、またお話しませんか?」
「ははっ。……そうですね。お手柔らかにお願いします?」
どうやら、全然諦めることはしないみたい。ポジティブすぎて困った困った。
19時前になり、二人は出口の方へと向かって歩き出す。それにみんなも付いて行った。
「今から何かあるんですか?」
「はい。クリスマスパーティーに招待されているんです。それはそうと、まだ閉館まで時間があったのによかったんですか?」
「流石に男一人で歩き回るのはちょっと……」
「そうですか? せっかくだから楽しめばよかったのに」
「……なら、また一緒に来ましょう? 今度は友達として。お礼はもう十分なので」
「ははっ。そうですか? でも、きちんとお返しできてよかった」
二人はまだ手を繋いだまま。駅にはもう、黒のリムジンが止まっていた。
「ありがとうございました。ここまでで大丈夫ですよ」
「長いお時間あおいさんをお借りしてしまったので、よければ執事さんにご挨拶させてください」
律儀な人だなと。そこまで言ってくれる彼の紹介も兼ねて、葵はシントに会わせることに。
「シント。お迎えありがとうございます」
「お嬢様、お帰りなさいませ――」
シントが目を見張る。けれど一瞬だったから、きっと持っていた荷物の量に驚いたのだろう。
「……たくさん買われたのですね。お持ち致します」
流れるように、葵の腕から荷物を全て持って行く。やはり正解だったようだ。
「……あおいさん。よければ」
「あ、ごめんなさい。シント、こちらアオイくんです。夢の国に誘ってくださった方で」
葵の紹介に合わせ、彼は笑顔でシントに会釈する。
「初めましてしんとさん。あおいさん、今日忙しいみたいだったのに、連れ出してしまって申し訳ありません」
「……いえ、藍様。お嬢様も大変楽しまれたご様子ですので、こちらがお礼を申し上げるべきで御座います。本日は、お嬢様と仲良くしていただきましてありがとうございます」
アイよりも深く、シントが頭を下げる。
「わわわ! そんな、頭を上げてください! あ、あおいさんも、何とか言ってくださいよお〜」
慌てるアイを見ているのも楽しかったけれど、シントが膝まで突きそうな勢いだったので、流石にそれは止めておいた。
「それでは、今日は失礼致します」
「はい! またお誘いします!」
軽く会釈し、葵は開かれた助手席へと乗り込む。
「それでは失礼致します藍様」
「はい! しんとさんも、また?」
シントはもう一度アイに深く一礼して、車を走らせた。



