すべてはあの花のために⑤


 それから二人は、今日の記念に何かを作るようだった。


「来年に向けての願い……?」

「すごく可愛いですね」


 小さな小瓶に鍵を入れ、その中に願いを込めるそう。


「……鍵、か……」


 葵はふと、首元で揺れるハートに触る。


「これ、作ってもいいですか?」

「はい。もちろんですよ」


 目薬ほどの小さい瓶の中へ、二人は器用に鍵やストーンなどを入れていく。


「あ、あおいさん。結構パンパンですね」

「そうですね。……どうしよう。中が見えなくなっちゃった」

「おう。何個石入れたんですか?」

「八つ入れました。色違いの。それから、見えないですけど鍵も」


 そうと決まったわけじゃない。
 けれどみんなは、その中へ一緒に入れてもらえた気がした。


 そして、メンタルを持ち直したみんなは再び尾行を開始!


「はい。あおいさん、あーん」

「い、いいですよ。自分で食べられますっ」

「でも、荷物持たせてくれないから、両手結構しんどいでしょう?」

「うぅ~……」

「はい。だから、ここから食べてくださーい」

「……も、もうちょっと下げてください」


 照れくさそうな葵に満足そうに笑う彼は、自分も口を開けながら、寒い中葵にジェラートを食べさせていた。


「おいしいですか~?」

「つ、つめたい、です……」


 冷たいと言いながら、顔はとても熱そうな葵に、みんなの機嫌は悪化。それでも先程のような空気になることはなく、そのまま一定の距離を保って尾行を続けた。


 そして18時。二人は、並んでパレードを見ていました。
 ちなみにアキラは主催側なので、悔しそうな顔をしながら途中で帰りました。


「今日は楽しかったですか?」

「はいとっても! あおいさんはどうでしたか?」

「わたしも、こういうところは来たことがなくて、新鮮で楽しかったです」

「……そっか。それはよかった」


 夢の国に入るや否や、終始葵が笑顔だったのも、みんなの機嫌が悪い原因でしたが。


「楽しんでいただけて、よかったです」

「?」

「お礼とかでこういうの、どうかと思うんですけど。でも、あなたと一緒に少しでも居られて、俺はすっごく嬉しかったから」

「…………」

「あおいさん。また、俺とデートしてくれませんか。もちろんお礼はなしで」


 きっと今、誰よりも緊張してるのは、彼ではなくみんな。葵の返事を、耳をそばだてて聞いていた。


「ありがとうございます。そう言ってもらえて、本当に嬉しいです」

「ほんと? だったら」


 葵は荷物を抱え直し、繋いでいたアイの手を一度ぎゅっと握る。


「嬉しかったのも楽しかったもの本当です。でもわたし、こういう素敵なことは好きな人と分かち合いたいので」


 そして、繋いでいた手をそっと離して、ふわりと笑いかけた。


「決して、もう会わないってことではありません。あなたは恩人ですから。デートはできませんが、よければまた、わたしとお話ししてください」


 それは『あなたの気持ちには応えられません』『恋人ではなく友人としてなら会いましょう』ということ。