すべてはあの花のために⑤


「今日は一段と冷えますねー。寒いのは平気?」

「うーん。あんまりですかね。夏生まれなので、冬はあまり得意な方ではなくて」

「わかりますー。俺も夏生まれなので、寒い日は家から出ないことが多くて」

「でも、体動かすの好きじゃないんですか?」

「嫌いではないですけど、どちらかというとおこたでぬくぬくするのが好きですね」

「ははっ。『おこた』って女性が使うんですよ?」

「え。そうなんですか? コンテストの時といい、恥ずかしいなあ……」



 クスッと笑っている葵の様子に、堪らず噛み付く三人。


「こちらグレー。どうやら対象者は仮面を着けていないようです、どうぞ」

「こちられっど! 何あおいチャン笑ってるのっ!」

「こちらイエロー! 男はデレデレのようですどうぞーっ!」


 一番にサイドをチカゼに編み込みしてもらい、眼鏡を掛けたアキラ、キャップとニット帽を被ったアカネとカナデが皆に報告。


「アカネ、それは報告じゃなくてただの嫉妬です、どうぞ」

「あー! なんで名前言うのおれんじ!」

「面倒くさいからです、どうぞ」

「そこは言ってよ! おれはれっどだよ!」

「………………」

「え。え? ちょ、おれんじー!?」


 三人は葵たちが乗っている車両の隣で、窓からあちらの様子を窺っている模様です、どうぞ。


「どうどう? ひーくん似合う~?」

「うん。今まさに『ポケ〇ンゲットだぜ!』って言いそうだよ」

「わーい! ありがとー!」

「え。別に褒めてないんだけど……」


 乗客の女性たちから「かわいい~」と言われているキャップを被ったオウリは、さっきの三人に混じっていった。
 ヒナタはというと、チカゼがツバサの編み込みをしてあげている隣で、ニット帽を深く被って座り込んでいる。


「アンタはいいの? 見に行かなくて」

「は? なんで見に行かなきゃいけないの」

「え。じゃあなんで今日来たのよ。ただでさえ人混みに行くのに」

「え。そんなの、面白そうだからに決まってるじゃん」

「……それ、デートがじゃなくて尾行がでしょ」

「当たり。流石。よくわかってるね」

「はあ」


 ほんと、イイ根性してるわと思ってしまったツバサ。ヒナタはそのあと「着いたら起こしてね」と、耳にイヤホンを着けたまま寝てしまった。


「確かに朝早かったけどよ……」

「なんでアンタそんなに落ち着いてんのよ……」

「眠気が勝つから」


 チカゼとツバサは、大きなため息をついたのだった。