大急ぎでみんなは隠れた。するとすぐに葵の姿が。
「ここで待ち合わせのはずなんだけど……」
辺りをキョロキョロと見るので、みんなして押し競饅頭状態。
「方向音痴だって言ったらここで待ち合わせしようっていうことになったはずなんだけど……」
知らなかった数人は、「そうなの?!」と驚いていたけれど。そうこうしているうちに、お相手到着。
「ごめんなさい! 待たせてしまいました!」
走ってきたのは、まさかのミスターコン優勝者で、ちゃっかり葵の唇奪っていった奴!
「あなたを待たせてしまうなんて。……申し訳ないです」
「ふふ。大丈夫ですよ。わたしも今来たところだったので」
「ありがとうございます。……それじゃあ行きましょうか。あおいさん」
「はい。今日はよろしくお願いします」
「ははっ。こちらこそ、お礼してくれてありがとう。よろしくお願いします」
二人は並んで切符を買い、電車に乗り込んでいった。
「なんなのあれ……」
「カレカノのかよ」
「俺の葵があああ……」
「だから。あきクンのじゃないから」
「あーおれ、イライラしてきちゃった?」
「お、桜李、アンタ顔怖いわよ……」
「これは先が思いやられるなー」
「よしみんな! あれの装着だっ!」
そう言ってキサが取り出したのは――……ただの眼鏡。そしてニット帽とキャップ。
「変装道具と言ったら、グラサンとかマスクとかでしょうと思ったそこのあなた! 侮ることなかれ! 逆にそんなのつけちゃうと周りの人たちが変に見てくるので、敢えてここはナチュラルに! ただでさえ集団行動するからね!」
「おーいキサ? 誰に向かって話してんだよお前」
「そしてそして! 帽子を被ることで目立つみんなの髪を何とかしようと思いますよ! 髪色普通な人はチカが何かアレンジしてあげなさい! ほれ。ゴムとピン」
「はあ?! ちょ、おい!」
キサは投げるだけ投げた。
「行き先はわかってるから、違う車両に乗り込んで尾行を開始するわよ!」
言いたいことはいっぱいあるけど、今日の目的はそれなので、みんなは大きく頷いたのだった。



