すべてはあの花のために⑤


「そういえばさ、月雪に『英語教室から運んできてもらった』って言ってたよな」

「え。うん。そうだよ?」


 しばらくしてから、ツバサがふっと何かを思い出したように話し始める。


「『そのあと話聞いてもらった』って、言ってたよな」

「…………」

「言えないならいい。これは『言いたくないこと』?」

「ふふっ。……内緒!」


 むぎゅっと、今度は葵の方からツバサに抱きついた。


「これはレンくんと内緒の話だから、ツバサくんには言えないのだー!」

「ちょっ。わ、わかったから、ちょっと離れて……!」


 そう言ってまたぎゅーっと抱きついてくる葵に、ツバサは肩を押し返すが全くビクともしなかった。


「……聞かない?」

「聞かない聞かない! 聞きたいけど今はそれどころじゃない!」


 よくわからなかったけど、取り敢えず解放してあげた。そしたらすぐに、ツバサはしゃがみ込んでしまう。


「あれ? ツバサくん大丈夫?」

「今話しかけるな。襲うぞ」

「ええっ?!」


 スチャッと戦闘態勢を取ったら、今度は肩を震わせて笑い始める。


「なんだよ。意識してんの?」

「つ、ツバサくんには過去何度か襲われそうになったのでっ!」

「そうかよ」


 もう大丈夫なのか、今度は口を尖らせた。


「なんだよ内緒話って」

「え? ツバサくん……?」


 しゃがんだまま、葵の指先をきゅっと握って。


「何楽しそうに笑ってんだっつの」

「(ど、どうすればいいんだこの状況……)」


 そして、握っていた指先が絡んでくる。
 まるで、その指先が「こっちを見て」と言っているようで。視線を合わせて、少し後悔した。


「……すっげえ妬ける」


 熱っぽい瞳に絡め取られて、身動き一つ、取れなくなったから。


「なあ」

「は、はい」

「この意味、ちゃんとわかって」

「……っ。は。はい」


 動揺を隠せない葵に、満足そうにツバサは笑った。