「そういえばさ、月雪に『英語教室から運んできてもらった』って言ってたよな」
「え。うん。そうだよ?」
しばらくしてから、ツバサがふっと何かを思い出したように話し始める。
「『そのあと話聞いてもらった』って、言ってたよな」
「…………」
「言えないならいい。これは『言いたくないこと』?」
「ふふっ。……内緒!」
むぎゅっと、今度は葵の方からツバサに抱きついた。
「これはレンくんと内緒の話だから、ツバサくんには言えないのだー!」
「ちょっ。わ、わかったから、ちょっと離れて……!」
そう言ってまたぎゅーっと抱きついてくる葵に、ツバサは肩を押し返すが全くビクともしなかった。
「……聞かない?」
「聞かない聞かない! 聞きたいけど今はそれどころじゃない!」
よくわからなかったけど、取り敢えず解放してあげた。そしたらすぐに、ツバサはしゃがみ込んでしまう。
「あれ? ツバサくん大丈夫?」
「今話しかけるな。襲うぞ」
「ええっ?!」
スチャッと戦闘態勢を取ったら、今度は肩を震わせて笑い始める。
「なんだよ。意識してんの?」
「つ、ツバサくんには過去何度か襲われそうになったのでっ!」
「そうかよ」
もう大丈夫なのか、今度は口を尖らせた。
「なんだよ内緒話って」
「え? ツバサくん……?」
しゃがんだまま、葵の指先をきゅっと握って。
「何楽しそうに笑ってんだっつの」
「(ど、どうすればいいんだこの状況……)」
そして、握っていた指先が絡んでくる。
まるで、その指先が「こっちを見て」と言っているようで。視線を合わせて、少し後悔した。
「……すっげえ妬ける」
熱っぽい瞳に絡め取られて、身動き一つ、取れなくなったから。
「なあ」
「は、はい」
「この意味、ちゃんとわかって」
「……っ。は。はい」
動揺を隠せない葵に、満足そうにツバサは笑った。



