「葵は、さっきの……月雪? だっけ。アイツと一緒にいたんでしょ?」
「ツバサ。くん……?」
「そうじゃないの?」
「う、うん。一緒に、いた」
「どうして?」
「ぺ、ペアだったから……」
すると、みんなはすごく残念そうな顔をした。
「……そう。月雪がペアだったの」
「うん。そうだよ?」
そうだけど……という意味を込めて首を傾げると、ツバサはふっと小さく笑った。葵の後れ毛を、そっと耳に掛けながら。
「アンタは……あれよ。電気すぐ点いたし、足捻挫した人を救護室に送ろうとしたけど、そこまで酷くなかったんでしょう。それでこっちに来ようと思ったら月雪に捕まったと。災難だったわね。でも無線の電源はつけておきなさいよ? 何かあったんじゃないかって、みんな心配するから」
「え? つ、ツバサくん。ちょおっ?!」
「ゴメンネーみんな。このあとアタシたちデートの約束してるのよお~」
そう言ってツバサは、葵の腕を掴んで立ち上がらせる。
「おいツバサ! 何抜け駆けしようとしてんだよ!」
「ち、ちかクン! ちょっと落ち着いて!」
「ツバサ? アオイちゃんそんな約束してないって顔してるけどー?」
「翼最低ー」
「ほんと、とんだ愚兄だよ」
「あんたもとんだ愚弟だと思うわよ?」
とことん悪口を言われても一切反論せず、ただ彼は、しっかりと葵の腕を掴むだけ。
「はいはいわかったわよ。それでいいから。……今回のことは、取り敢えず誰かが悪戯でしたってことでいいんじゃない?」
「それには同意見だが」
「でもさー、今後もあるってなったら対策とか考えないといけないじゃん?」
「そうだよな。次のイベントは……え。ば、バレンタインかよ」
「あれはオレらがどう対処するかだけでしょ」
「じゃあそれまでに次の対策考えよっか!」
「そうだねえ~きさチャン」
「それじゃあつっくんは、あーちゃんとデートいってらっしゃあい!」
あっさりとデートを承認するオウリに、みんなだけでなくツバサや葵も目が点になる。
「……さっすが。よくわかってるじゃないのよ」
けれど、オウリのウインクに何かを察したのか。ツバサから小さくそうもれる。「うげ。オカマのウインク返しが来た」と机に突っ伏したオウリは、そのオカマさんから横っ腹に蹴りを入れられていたけれど。
「明日は13時に学校でOKね? それじゃあ葵戴いていくから」
思わずみんなと一緒に「返してね」と葵も混ざる。
「なんでアンタも混じってるのよ」
「わたしものじゃないもん!」
少しだけ、ツバサは困惑した表情を浮かべた。
けれど、それもすぐにいつも通りに戻って腕を引っ張られた。
「それじゃあまた明日ね」
「ま、また明日! なんかこんな別れ方でごめん!」
「いいよー! 食べられないようにねー!」
それはなんとしてでも阻止せねばと、葵は親指をグッと上げた。



