すべてはあの花のために⑤


「葵は、さっきの……月雪? だっけ。アイツと一緒にいたんでしょ?」

「ツバサ。くん……?」

「そうじゃないの?」

「う、うん。一緒に、いた」

「どうして?」

「ぺ、ペアだったから……」


 すると、みんなはすごく残念そうな顔をした。


「……そう。月雪がペアだったの」

「うん。そうだよ?」


 そうだけど……という意味を込めて首を傾げると、ツバサはふっと小さく笑った。葵の後れ毛を、そっと耳に掛けながら。


「アンタは……あれよ。電気すぐ点いたし、足捻挫した人を救護室に送ろうとしたけど、そこまで酷くなかったんでしょう。それでこっちに来ようと思ったら月雪に捕まったと。災難だったわね。でも無線の電源はつけておきなさいよ? 何かあったんじゃないかって、みんな心配するから」

「え? つ、ツバサくん。ちょおっ?!」

「ゴメンネーみんな。このあとアタシたちデートの約束してるのよお~」


 そう言ってツバサは、葵の腕を掴んで立ち上がらせる。


「おいツバサ! 何抜け駆けしようとしてんだよ!」

「ち、ちかクン! ちょっと落ち着いて!」

「ツバサ? アオイちゃんそんな約束してないって顔してるけどー?」

「翼最低ー」

「ほんと、とんだ愚兄だよ」

「あんたもとんだ愚弟だと思うわよ?」


 とことん悪口を言われても一切反論せず、ただ彼は、しっかりと葵の腕を掴むだけ。


「はいはいわかったわよ。それでいいから。……今回のことは、取り敢えず誰かが悪戯でしたってことでいいんじゃない?」

「それには同意見だが」

「でもさー、今後もあるってなったら対策とか考えないといけないじゃん?」

「そうだよな。次のイベントは……え。ば、バレンタインかよ」

「あれはオレらがどう対処するかだけでしょ」

「じゃあそれまでに次の対策考えよっか!」

「そうだねえ~きさチャン」

「それじゃあつっくんは、あーちゃんとデートいってらっしゃあい!」


 あっさりとデートを承認するオウリに、みんなだけでなくツバサや葵も目が点になる。


「……さっすが。よくわかってるじゃないのよ」


 けれど、オウリのウインクに何かを察したのか。ツバサから小さくそうもれる。「うげ。オカマのウインク返しが来た」と机に突っ伏したオウリは、そのオカマさんから横っ腹に蹴りを入れられていたけれど。


「明日は13時に学校でOKね? それじゃあ葵戴いていくから」


 思わずみんなと一緒に「返してね」と葵も混ざる。


「なんでアンタも混じってるのよ」

「わたしものじゃないもん!」


 少しだけ、ツバサは困惑した表情を浮かべた。
 けれど、それもすぐにいつも通りに戻って腕を引っ張られた。


「それじゃあまた明日ね」

「ま、また明日! なんかこんな別れ方でごめん!」

「いいよー! 食べられないようにねー!」


 それはなんとしてでも阻止せねばと、葵は親指をグッと上げた。