しばらくして、22時を知らせる鐘の音が響いた。
パーティーは一応終了予定。ほんの少しだけ、物足りなく感じた。
「ありがとうございました。とても、楽しかった」
「……もう、大丈夫そうですか」
一曲で終わらず、何曲もそのあと一緒に踊った。その間に、葵の涙もようやく止まった。
「はい。ご迷惑をお掛けしました」
「いいえ。……言ったでしょう。私の前では泣いていいと」
「お気遣いありがとうございます。にしても、どうしてわたしは泣いていたのでしょう……」
けど彼は、何故か切なそうに笑うだけ。
「あまり気にしない方がよろしいかと。余程つらいことがあったのではないかとお見受けしますので」
「……そう、ですね。でも、今日のことは内緒で、何卒お願いします」
「はは。……はい。わかりました」
二人は互いのプレゼントを持ち、保健室を後にする。
「あおいさんは、このあとのご予定は?」
「あ。わたしは尋問の予定が」
「はい?」
目を点にして彼が聞き返してくるのがおかしかった。
「そうなりますよね。そもそも、どうしてわたしが尋問されなくてはいけないのでしょう」
「え? 冗談とかではないんですか?」
「何も悪いことはしてないんですけど、どうやらみんなの気に障ってしまったようで……」
「えーっと。よくわかりませんが……が、頑張って?」
「せっかくですし、レンくんも一緒に来ませんか? あなたがいれば心強いんですけど」
「すみません。そう言っていただけて嬉しいのですが、私も今日はもう帰らないと」
「そうですか。それは残念です」
葵はしょんぼりした。だって、このあと本当に怖いんだもの。
帰らないといけないというのに、彼は体育館の控え室まで送ってくれた。
「それではあおいさん。また」
「今度お会いできるのは年明けでしょうか」
「そんなに、私と会えないことが寂しい?」
「え――」
腕を引いて、彼はそっと抱き締めてくる。
「れ、れんくんっ? に、日本式で……」
「きっとすぐですよ。だから、そんな寂しそうな顔しないでください。離れがたくなる」
「……!」
彼は葵の額にキスを落とし、小さな微笑みを残して帰っていった。



