すべてはあの花のために⑤


「あ。あの。れんくん」

「はい。何ですか?」


 葵は彼の胸の中で身動ぎしながら尋ねた。


「こちらまで運んでくださったのは、レンくん?」

「……はい。そうですよ」

「ありがとうございました。お布団、とてもあったかかったから」

「それはよかったです」


「もう大丈夫ですね」と、レンが少し離れていく。


「よければ、もらっていただけますか」


 それに少しだけ寂しさを覚えていると、そっと目の前に差し出されたのは、綺麗にラッピングされたクリスマスプレゼント。


「もしよければ使ってください」

「……開けても?」


 嬉しそうに彼が頷いたので、ゆっくりとリボンを外す。
 何故か震え続ける手でラッピング開けると、そこから現れたのは、可愛らしいミトンタイプの雪のように白い手袋。


「これからまだ寒くなりますので、よければ」

「……ありがとう。ございます……」

「……お気に召しませんでしたか?」

「あっ。いえ。……すごく可愛らしくて。あったかそうだなって……」


 ただじっと、葵の言葉を聞いてくれている彼の瞳は、どうしてか「それで、本当は?」と言っているような気がして。


「……ちょっとだけ。れんくんっぽくないなって。そう思ってただけなんです」


 彼ならもっと大人で、シックなものを選びそうな気がしたから。


「私が選びましたよ」


 すごく失礼なことを言ってしまったのに、ただ彼は、やさしく微笑んでくれた。


「あ。あの。わたしも。プレゼントが……」


 予め用意していたものだし、謝罪にもお礼にもならないだろうけどと、葵は紙袋から長方形の箱を取り出す。


「男性に贈り物なんて初めてで。……どんなものが喜ばれるかわからなかったのですが」

「……開けても?」


 彼の、綺麗な長い指先が、静かに箱を開ける。
 葵が選んだのは、アンティーク調の腕時計だった。


「……どうして、こちらを?」

「お。お気に召しませんでしたか……?」

「とんでもないです。とても素敵で嬉しいです。……ーーーと、ーーーーーーーたので……」

「れんくん……?」


 けれどもう一度掠れてしまった言葉を言うつもりはないようで、彼は小さく笑って葵の言葉を待っていた。


「時は金なりと言いますし。今ある時間を大切にしていただければと。そう思ったんです」

「……そうですね。今この時もこの時計も、ずっと大事にします」


 嬉しそうに、にっこりと笑ってくれた。
 気に入ってくれたみたいでよかったと、ほっと安堵していると「あおいさん。よければ一曲、お願いできますか?」と、ダンスを申し込まれる。


「……でも。ここに音楽は……」


 と思っていると音楽が流れ始める。彼のスマホからだった。


「……クラシック。お好きなんですか?」

「嫌いなわけではないですが。……ただ、入れておくといいと言われたので」


 はっきりしない回答に首を傾げていると、彼は小さく笑って膝を突く。


「踊って、いただけますか?」

「ふふっ。……はい。わたしでよければ」


 差し出された手を、今度はすんなり取ってベッドから下りる。