すべてはあの花のために⑤


「……た。確か。プレゼント交換を。していて……?」

「ああ、そうです。でも、なかなかペアの方が見つからなかったのしか思い出せなくて。いつの間にか、英語教室にいました」


 そう言って彼は、ポケットからカードを取り出した。無地の緑色のカードを。


「……もしかして、お相手があおいさんだったりするのでしょうか」


 まさかそんなはずは……そう思いながら葵も、自分の持っているカードを取り出す。


「(……あ。れ。なんで今。胸が……)」


 ズキンと痛む胸を押さえながら、葵は持っていた無地のカードを取り出した。開いてみると、そこには半分に切れた文字が。


「あ。……一緒ですね」

「……そう。ですね」


 それに酷い違和感を感じたけれど、それがどうしてなのか。理由はわからなかった。


「にしても、どうして会場を抜け出したりしたのでしょう」

「な。なんで。でしょう……」


 それでもやっぱり、葵の涙は止まらなかった。


「……どうやらあなたは、覚えていらっしゃるようですね」

「えっ?」


 胸の前でカードを抱えていると、彼はすっと、葵の手に自分の手を重ねる。


「覚えているから、泣いていらっしゃる。あなたの『ここ』は、ちゃんと覚えてる」


 彼が示したのは心。葵の記憶には残っていないけど、心には残っているのだろうと。


「何か、涙が止まらなくなってしまうような出来事があったんですね」

「……。そう。なのでしょうか……」

「止まるまで、そばにいても?」

「え? で、でも。せっかくのパーティーですし……」


 重ねられた彼の手に、ぎゅうと力が入る。


「私が今いたいのはあなたのそばです。断られてもいますよ。たとえずっと、泣き止まれなかったとしても」

「そ。それはちょっと困るので。……頑張って。泣き止みます」

「……いいえ。泣いてください、あおいさん」

「れん。くん?」

「泣ける時に泣いてください。……もう、泣かれないのでしょう?」

「……! ……は。いっ」


 一体、辿り着いた英語教室で何があったのか。結局思い出せないまま、葵は彼の胸の中で一頻り涙を流した。