「……た。確か。プレゼント交換を。していて……?」
「ああ、そうです。でも、なかなかペアの方が見つからなかったのしか思い出せなくて。いつの間にか、英語教室にいました」
そう言って彼は、ポケットからカードを取り出した。無地の緑色のカードを。
「……もしかして、お相手があおいさんだったりするのでしょうか」
まさかそんなはずは……そう思いながら葵も、自分の持っているカードを取り出す。
「(……あ。れ。なんで今。胸が……)」
ズキンと痛む胸を押さえながら、葵は持っていた無地のカードを取り出した。開いてみると、そこには半分に切れた文字が。
「あ。……一緒ですね」
「……そう。ですね」
それに酷い違和感を感じたけれど、それがどうしてなのか。理由はわからなかった。
「にしても、どうして会場を抜け出したりしたのでしょう」
「な。なんで。でしょう……」
それでもやっぱり、葵の涙は止まらなかった。
「……どうやらあなたは、覚えていらっしゃるようですね」
「えっ?」
胸の前でカードを抱えていると、彼はすっと、葵の手に自分の手を重ねる。
「覚えているから、泣いていらっしゃる。あなたの『ここ』は、ちゃんと覚えてる」
彼が示したのは心。葵の記憶には残っていないけど、心には残っているのだろうと。
「何か、涙が止まらなくなってしまうような出来事があったんですね」
「……。そう。なのでしょうか……」
「止まるまで、そばにいても?」
「え? で、でも。せっかくのパーティーですし……」
重ねられた彼の手に、ぎゅうと力が入る。
「私が今いたいのはあなたのそばです。断られてもいますよ。たとえずっと、泣き止まれなかったとしても」
「そ。それはちょっと困るので。……頑張って。泣き止みます」
「……いいえ。泣いてください、あおいさん」
「れん。くん?」
「泣ける時に泣いてください。……もう、泣かれないのでしょう?」
「……! ……は。いっ」
一体、辿り着いた英語教室で何があったのか。結局思い出せないまま、葵は彼の胸の中で一頻り涙を流した。



