「そういえば、最初に見たこの掲示板。破れたポスターだけで、赤い封筒はなかったよね?」
もしかしたら、そこがいつもの出出しだったのかもしれない。
「焦っていたのは確かだけど、見落としてはいないはず」
でも、もしものことがあったらと思い、ポスターを貼ったまわりを入念に確認していく。
「……やっぱりないよね」
実は、その【欠けた文章】の行方については、何となく予想は付いている。
「……違う違う。間違えた。絶対に、そんなことはないって、信じてるんだ」
葵はすぐに頭を切り換えて、もう一度読み直す。
「あと、思いつくのってさっきのカードだけど……なんか見慣れたな、この赤にも」
赤は、葵の『太陽』を奪った、もう一つの人格が愛してやまない色。
赤を身に着けた理由には、もう一つ意味がある。それは、葵の意思表示だった。
「どうせどっかで見てるんでしょ。……わたしが、自分からは絶対に着ない赤を着てる意味、わかってるんでしょうね」
――ただで消えてなんかやるものかと。
「……はあ。やっぱり、今回はヒントなしなのかな」
カードを見ながら、今までの手紙も思い出す。
「【緑】は関係ないかな。いつもとは違うけど、きっとこれが【赤】だったら、わたしは多分レンくんに会うまでに開いてたと思うし」
もしそうしていたら、結局のところ『彼がターゲットだ』と言われても、その彼が誰なのかはわからずじまい。つまり、まんまと相手の思惑通りに事が運んだというわけだ。
「……【英語】?」
もしかしたら違うかもしれない。
でも、合ってるかもしれない。
「でも。違ってたら。もう当てなんて……っ」
恐怖心に苛まれながら、葵は次の目的地へと急ぐ。
「お願いレンくん。無事でいて……!」
真っ赤なドレスを翻して。
――――――…………
――――……
「はあ。はあ。はあ……」
辿り着いたのは英語教室。桜の中で『English Only』と決められている、唯一の教室だ。
「(……っ、お願い……!)」
葵は一度気持ちを落ち着かせたあと、ガラガラと音を立てて教室の戸を開いた。



