すべてはあの花のために⑤


「そういえば、最初に見たこの掲示板。破れたポスターだけで、赤い封筒はなかったよね?」


 もしかしたら、そこがいつもの出出しだったのかもしれない。


「焦っていたのは確かだけど、見落としてはいないはず」


 でも、もしものことがあったらと思い、ポスターを貼ったまわりを入念に確認していく。


「……やっぱりないよね」


 実は、その【欠けた文章】の行方については、何となく予想は付いている。


「……違う違う。間違えた。絶対に、そんなことはないって、信じてるんだ」


 葵はすぐに頭を切り換えて、もう一度読み直す。


「あと、思いつくのってさっきのカードだけど……なんか見慣れたな、この赤にも」


 赤は、葵の『太陽』を奪った、もう一つの人格が愛してやまない色。
 赤を身に着けた理由には、もう一つ意味がある。それは、葵の意思表示だった。


「どうせどっかで見てるんでしょ。……わたしが、自分からは絶対に着ない赤を着てる意味、わかってるんでしょうね」


 ――ただで消えてなんかやるものかと。



「……はあ。やっぱり、今回はヒントなしなのかな」


 カードを見ながら、今までの手紙も思い出す。


「【緑】は関係ないかな。いつもとは違うけど、きっとこれが【赤】だったら、わたしは多分レンくんに会うまでに開いてたと思うし」


 もしそうしていたら、結局のところ『彼がターゲットだ』と言われても、その彼が誰なのかはわからずじまい。つまり、まんまと相手の思惑通りに事が運んだというわけだ。


「……【英語】?」


 もしかしたら違うかもしれない。
 でも、合ってるかもしれない。


「でも。違ってたら。もう当てなんて……っ」


 恐怖心に苛まれながら、葵は次の目的地へと急ぐ。


「お願いレンくん。無事でいて……!」


 真っ赤なドレスを翻して。


 ――――――…………
 ――――……


「はあ。はあ。はあ……」


 辿り着いたのは英語教室。桜の中で『English Only』と決められている、唯一の教室だ。


「(……っ、お願い……!)」


 葵は一度気持ちを落ち着かせたあと、ガラガラと音を立てて教室の戸を開いた。