すべてはあの花のために⑤


「(……考えろ。考えろ考えろっ!)」


 真っ暗闇の中、葵はただ走り続けた。


「(生徒会メンバーだって決めつけてた。これだと真っ赤にしてるのはかえって都合が悪い!)」


 生徒会メンバーだったら、赤を目印にして無線で連絡が取れると思っていた。でも、……甘かった。向こうが上手だった。


「(電話も繋がらないし、完全に先を読まれてる……ッ)」


 人の隙間をぬって、ひとまず会場から出て脱出した葵は、体育館の周りを一周する。


「どこ! どこにいるの! レンくんっ!」


 ひたすら走った。今回ばかりは、推理も何もできない。ただ叫び声を上げながら、ヒントも何もないまま消えた彼の行方を捜すだけだ。

 たとえ喉が潰れようとも。葵は叫んだ。叫び続けた。それでもやっぱり、彼からの返事はない。


「……何か、ヒントがあったのかな」


 彼が持っていたカードには、【It's Show Time.】と、メッセージが書かれていた。そして、葵が持っていたカードには【Today’s target is him.】とだけ。


「……特に、変わったことなんて……っ」


 早くしないとと、気持ちが逸る。


((……アオイダメ。コレ以上ハ……))

「(えっ? て、天の声さん……?)」


 久し振りに現れたそれは――……警告。


「(でも、だめなんだよ天の声さん。急がないと……)」

((焦ッチャ、ダメ。抑エラレナクナル))

「(……!? ご、ごめん)」

((一気ニ考エナイデ。ユックリダッタラ、ダイジョウブ))

「(っ、で、でもっ!)」

((気持チハワカルケド、モウワタシ、全部カタコト。コノ意味、ワカルデショ?))

「(……抑えが、もう限界ってこと……?)」

((モウヒトリ。スグソコ。コノママダト、願イ叶エラレナイママ))

「(そ、それはだめだ。……うん。わかった。ゆっくり考えることにする)」

((ウン。ソウシテ。アンタナラ大丈夫ダカラ))

「(うん。……ありがとう天の声さん)」


 葵は一度立ち止まり、ゆっくり息を吐いて……吸って、姿勢を正す。


「あれ? そういえば今回の赤い封筒、何か違ったような」


 いつもは、嫌みったらしく【ドウミョウジ アオイ サマ】と、わざわざ名指ししていた。
 でも、それが今回はなかった。【サテト】から、文章が始まっていた。


「わかんないけど、取り敢えずポスター貼ってあったところ回ってみる?」


 どうせ明日剥がしに行くんだしと、気持ちを落ち着かせながら、競歩でポスターを貼った全6ヵ所を回ることに。