「その日はデートなんです(お礼分のだけど)」
控え室は、みんなの絶叫でちょっと揺れた。
その時、20時15分前にセットしたアラームも鳴った。
「時間ですね。大急ぎでわたしたちも着替えましょう。アキラくん、ケーキは裏の冷蔵庫に準備していたんでしたっけ」
「……え。あ、葵?」
「なんですか? 早くしないと皆さんが困ってしまいますよ」
「あおいチャン? い、今、なんて言った?」
「え? だから、ケーキは裏の冷蔵庫にあるのかと」
「その前だっつの!」
「えっと、『大急ぎで着替えましょう』?」
「アオイちゃん、わざとやってるでしょ」
カナデ並びに他のみんなの視線が怖くなっていく。
「だから言いたくなかったんですよう」
空気が一気に殺気や嫉妬で膨らんだ。
「みんな、22時にもう一度ここへ集合だ」
「え? な、何故ですか?」
葵に容赦なくみんなの視線がぶっ刺さる。
「あーちゃん? おれら、聞きたいこといっぱいあるんだよねー?」
「え? お、オウリくん、ですよね?」
「何勝手にデートの約束入れてんだよ」
「つ、ツバサくん?! 男の子バージョンになってますよ?!」
「下僕のくせにいい度胸。再び尋問を行います」
「ええ!? あ、あの券は使わないでいただけると……」
「返答による」
「(あ。ダメだ。使われるわこれ)」
そんな様子に、キサ一人だけ「修羅場!?」と楽しそうだった。
そのあと時間が差し迫ってきていたので、大急ぎで更衣室へ分かれ、また冷蔵庫の前で集合することに。
「え。あっちゃん、それ着るの?」
「? 変でしょうか」
「いや変じゃないんだけど。……なんだろう。似合ってないわけじゃないんだけど、やっぱり違う気もするんだよね」
悩ましげに腕を組むキサに、少しだけ仮面を外して、そっと感謝を告げた。
「あっちゃん?」
「時間もないことですし、早く行きましょう。お店の方が手伝ってくれるにしても、全校生徒に配るのには時間がかかってしまいますよ」
「う、うん。そうだね!」
葵たちが運ぶのは、各クラス一番近い壁側の空いたテーブル。ケーキはそこから取ってもらう手筈になっている。きちんとみんなに手渡ったら、カナデに合図して一斉に食べてもらう算段だ。
冷蔵庫のところへ行くと男性陣はもう来ていて、どこか空気がピリついていた。
「お待たせして申し訳ありません」
「ごめーん! 遅くなった!」
バッと振り返った男性陣の顔は殺気立っていたけれど、葵の姿を確認した瞬間、それは驚愕へと変わる。
「葵、それ……」
「アキラくん。まずはケーキからですよ」
「でも、アオイちゃん」
「カナデくん? 急がないと、皆さん待っていますよ」
「なんでお前、真っ赤なんだよ」
チカゼと同じようなことを、みんなも思っているようだった。
「……似合いませんか?」
「別にそんなことはないわよ」
「だったらいいじゃないですか」
「でも、あおいチャン……」
「おれは似合わないと思う!」
「後夜祭の時は見つけていただけなかったので、今度は見つかりやすいようにしただけですよ」
「まあ目立つだろうけどさ」
――そう。たとえ『何があっても』見つけやすいように。



