「やっほ~! 替わるよー!」
「アカネくん。もう着替えたんですね」
「え? もうそんな時間?」
企画者である生徒会メンバーは、サンタかトナカイの衣装を着ることになっていた。
(※ちなみに、きっともう大体予想してると思うけど、振り分けはこう。
【サンタ】
葵・キサ・ツバサ・オウリ
【トナカイ】
アキラ・カナデ・アカネ・チカゼ・ヒナタ
サンタはミニスカ。オウリが入ってるのがミソです。絶対可愛いと思うからって、葵がこっちを推しました。
はじめは嫌がってたけど、『あれ? よく考えたらあーちゃんと一緒じゃーん!』と、無事に誘導が成功し、すぐに了承をもらいました)
「大体あと二時間ってところだよ。あと一時間したらみんな来ちゃうし、みんなこの一時間で着替えてくるってー」
「わかった! おれ先に着替えてくるから、アカネはここ、あーちゃんと一緒に完成させちゃってー!」
ばびゅんっと、脱兎の如く彼は控え室にある更衣室へと向かっていった。
「(あれ? 珍しい。普段なら『あーちゃんも行こ!』とか言ってきそうなのに……)」
「多分おれに気を遣ったんだと思うよ」
「え?」
また声が漏れていたかと思ったけれど、表情で何となくわかったみたいだった。
「おれもあおいチャンのこと好きだから」
「……!」
「っていうのを暴露したのは、そのあおいチャンだけどね?」
「も、申し訳ありません」
もうウコンと乳酸菌飲料と炭酸は飲みません。どれがきっかけだったのかは気になるけど、またなったら怖いので。
「ううん。おれだけみんなに言わないっていうのもあれだし」
「な、なんでみんなはいちいち報告とかされるんですか? そういうのって普通、心に留めておくようなんじゃ……」
「? それだけ、あおいチャンが好きだってことだよ」
「えっ?」
ずれ落ちそうで、気になってしょうがない真っ赤な鼻を、アカネは触りながら。
「宣戦布告なんだ。『邪魔なんてさせない』『自分は本気だから』って。そういうことだよ」
言葉なんて出なかった。
こんな運命に縛られて。自分のそばにいたら、不幸にだってなるかもしれないのに。
「まあちかクンもおうりも、何となくあおいチャンに何かあるんだって、気がついてるんだろうね」
「え。なんで知って……」
「ん? だって、二人のあおいチャンを見る目に、愛しさと一緒に、不安とか心配が混じってるから」
「(そ、そんな目で見られてるの?! ほんとやめてっ。心臓に悪いから)」
そして現に今、アカネが『そういう視線』で見つめてくる。
「でも、それはもちろんだけど、おれは君を先に何とかしたくてしょうがないんだよね」
「あかねくん……」
ほんわかさんなアカネはもう、葵の前にはない。いるのはただ、『答え』を求める強い瞳だけ。
「でも、今はやめておくよ」
「へ?」
元通りの可愛いくまさんみたいに戻ったアカネは、にっこり笑うだけ。
「だって、おれはあおいチャンと話したいし、近づきたいからねー。がっつきすぎて誰かさんみたいになるのいやだしー?」
「ど、どうして何でもお見通しなのでしょう……」
「え? あきクンが悩む原因なんて、あおいチャンのことしかないからだよ?」
「そ。そうだったんですね」
わかりやすいアキラが原因だった。
「だから、あおいチャン。きっとしんどかったんだと思う。でも、あきクンも悪かったって、そう思ってるからね」
「……うん。大丈夫だ。ちゃんとわかってるよ」
仮面をずらした葵に、アカネは目を少しだけ見開くが、そのあとにっこり笑う。
「今日は楽しも? 精一杯! それが今日のあおいチャンのお仕事だよお!」
「……っ。うん。ありがと。アカネくん」
温かく言葉で包み込んでくれる彼が、いてくれるだけでほっとした。
クリスマスパーティー開始まで、あと…………1時間半。



