すべてはあの花のために⑤


「やっほ~! 替わるよー!」

「アカネくん。もう着替えたんですね」

「え? もうそんな時間?」


 企画者である生徒会メンバーは、サンタかトナカイの衣装を着ることになっていた。
(※ちなみに、きっともう大体予想してると思うけど、振り分けはこう。


【サンタ】
 葵・キサ・ツバサ・オウリ

【トナカイ】
 アキラ・カナデ・アカネ・チカゼ・ヒナタ


 サンタはミニスカ。オウリが入ってるのがミソです。絶対可愛いと思うからって、葵がこっちを推しました。
 はじめは嫌がってたけど、『あれ? よく考えたらあーちゃんと一緒じゃーん!』と、無事に誘導が成功し、すぐに了承をもらいました)


「大体あと二時間ってところだよ。あと一時間したらみんな来ちゃうし、みんなこの一時間で着替えてくるってー」

「わかった! おれ先に着替えてくるから、アカネはここ、あーちゃんと一緒に完成させちゃってー!」


 ばびゅんっと、脱兎の如く彼は控え室にある更衣室へと向かっていった。


「(あれ? 珍しい。普段なら『あーちゃんも行こ!』とか言ってきそうなのに……)」

「多分おれに気を遣ったんだと思うよ」

「え?」


 また声が漏れていたかと思ったけれど、表情で何となくわかったみたいだった。


「おれもあおいチャンのこと好きだから」

「……!」

「っていうのを暴露したのは、そのあおいチャンだけどね?」

「も、申し訳ありません」


 もうウコンと乳酸菌飲料と炭酸は飲みません。どれがきっかけだったのかは気になるけど、またなったら怖いので。


「ううん。おれだけみんなに言わないっていうのもあれだし」

「な、なんでみんなはいちいち報告とかされるんですか? そういうのって普通、心に留めておくようなんじゃ……」

「? それだけ、あおいチャンが好きだってことだよ」

「えっ?」


 ずれ落ちそうで、気になってしょうがない真っ赤な鼻を、アカネは触りながら。


「宣戦布告なんだ。『邪魔なんてさせない』『自分は本気だから』って。そういうことだよ」


 言葉なんて出なかった。
 こんな運命に縛られて。自分のそばにいたら、不幸にだってなるかもしれないのに。


「まあちかクンもおうりも、何となくあおいチャンに何かあるんだって、気がついてるんだろうね」

「え。なんで知って……」

「ん? だって、二人のあおいチャンを見る目に、愛しさと一緒に、不安とか心配が混じってるから」

「(そ、そんな目で見られてるの?! ほんとやめてっ。心臓に悪いから)」


 そして現に今、アカネが『そういう視線』で見つめてくる。


「でも、それはもちろんだけど、おれは君を先に何とかしたくてしょうがないんだよね」

「あかねくん……」


 ほんわかさんなアカネはもう、葵の前にはない。いるのはただ、『答え』を求める強い瞳だけ。


「でも、今はやめておくよ」

「へ?」


 元通りの可愛いくまさんみたいに戻ったアカネは、にっこり笑うだけ。


「だって、おれはあおいチャンと話したいし、近づきたいからねー。がっつきすぎて誰かさんみたいになるのいやだしー?」

「ど、どうして何でもお見通しなのでしょう……」

「え? あきクンが悩む原因なんて、あおいチャンのことしかないからだよ?」

「そ。そうだったんですね」


 わかりやすいアキラが原因だった。


「だから、あおいチャン。きっとしんどかったんだと思う。でも、あきクンも悪かったって、そう思ってるからね」

「……うん。大丈夫だ。ちゃんとわかってるよ」


 仮面をずらした葵に、アカネは目を少しだけ見開くが、そのあとにっこり笑う。


「今日は楽しも? 精一杯! それが今日のあおいチャンのお仕事だよお!」

「……っ。うん。ありがと。アカネくん」


 温かく言葉で包み込んでくれる彼が、いてくれるだけでほっとした。

 クリスマスパーティー開始まで、あと…………1時間半。